セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店であるそごう・西武の労働組合がその売却をめぐり、雇用の維持や事業継続について具体的な説明がないのは不当だとして、ストライキ権を確立し、その実施を「タテ」にして会社側に説明を求める方針を決定した。
そもそもは、セブン&アイ・HDが昨年11月に米国ファンドフォートレス・インベストメント・グループにそごう・西武を売却する契約を締結。売却価格は約2000億円と見られ、売却は2023年2月が予定されていた。しかし、売却時期は2度延期され現在は未定になっている。フォートレスは、大手家電量販店ヨドバシHDと連携しており、たとえば西武百貨店池袋本店の低層階はヨドバシカメラになるなどの青写真が語られ始めていた。これに対しては、豊島区長が「街づくりの観点から大手家電量販店が今の西武百貨店の場所に出店するのは好ましくない」と発言したり、セブン&アイ・HDの株主でもあるそごう・西武の従業員とOBによる米国投資ファンドへの売却の差し止めを求める株主代表訴訟なども起こっている。
今回のスト権をめぐっては、そごう・西武の全国10店舗の全従業員約5000人の80%に当たる4000人の組合員のうち過半数が認めれば、可決されることになる。
スト権を「タテ」にして、親会社セブン&アイ・HDとそごう・西武労組が話し合って、雇用の維持や事業継続を勝ち取ることができるのかどうか大いに注目されるところだ。百貨店マンから家電量販店販売員に転身するのはそう難しいことには思えないのだが、百貨店マンには我々にはうかがいしれぬプライドがあるようだ。
4月6日に発表したセブン&アイ・HDの2023年2月決算は営業収益11兆8113億円、営業利益5065億円、経常利益4758億円、親会社株主に帰属する当期純利益2809億円という驚異的な好決算を達成しているが、2000億円ほどのこの百貨店事業の売却ではミソを付けてしまった。「なんで、こんなもの買っちゃったんだろう?」と思っているセブン&アイ・HDのトップは多いはずだ。