化粧品が合わない・合わなくなったと感じて、新しいものを次々に試してみて、でも結局、どれも肌に合わない…という経験、みなさんもあるのではないでしょうか。今まではなんの問題もなかった化粧品が急に合わなくなった、合う化粧品が見つからないと感じる…、その原因は化粧品ではなく肌の状態の方にあるかもしれません。
自分の今の肌が刺激を受けやすい状態になってしまっている、という可能性にも目を向けてみましょう。もちろん、化粧品に対するアレルギーが起きているということも考えられますが、順番としてまずは肌状態の方の原因を考えてみることをおすすめします。
肌が敏感に傾いている、つまり肌の元気が低下している状態の時は、どんな化粧品を使っても刺激を感じてしまいます。刺激を感じて次々といろんな化粧品を買って、でも肌に合わずに使わなくなってしまうのを繰り返すのはもったいないですよね。ですから、まずは刺激を受けやすくなってしまった肌を立て直すためにケアを見直したりまたは治療を行うことが優先です。
◾️触れれば触れるほど荒れてしまう肌
原因がなんであれ、肌は一度荒れてしまうと、元の元気な状態にすぐに戻るわけではありません。実は、真っ赤・痒いなどのわかりやすい症状がなくなった時でも、目に見えないレベルで肌荒れが続いています。そして、荒れている肌は通常よりも外からの刺激を受けやすくなるので、一旦荒れるとさらに荒れやすくなる、という悪いサイクルに入ります。
この悪いサイクルを一旦止めて元の元気な肌に戻していくためには、時にはお薬による治療が必要です。「薬の力に頼らず肌自身の持つ力で自然に治す」というような表現、みなさん聞いたことがあるのではないでしょうか。この言葉はとても響きが良いのですが、実は荒れている状態を放置することで肌自身が自然に治る力も低下するということはもっと知られてほしいと思います。
いろんな化粧品が急に合わなくなったのは、化粧品のせいではなく、自分の肌状態の低下が根本にあることも多いのです。次々といろんな化粧品を買うよりも、まずはしっかりと治療して、健康な肌に戻してから化粧品を楽しむ、そのような順番であって欲しいと化粧品が好きな皮膚科医として強く思います。
いろんな化粧品が合わない、こうした肌悩みは、日頃から化粧品を頻繁に使う世代に多いのも特徴です。美肌の大前提として、肌には摩擦は厳禁です。大まかに言えば、触れれば触れるほど肌は荒れやすくなります。大人の女性は日常的に、スキンケアを数品塗って、ベースメイクも数品重ねて、ブラシなどのツールでまぶたや頬にメイクを行い、夜はクレンジングしてまたスキンケア、と1日で肌を触る工程がとても多いですよね。この工程の一つ一つが肌への摩擦になります。肌が荒れているなと感じるからこそ、しっかりお手入れをしたくなる気持ちはとてもわかりますが、摩擦による悪化を防ぐためにもむしろスキンケアやメイクの工程を減らしてみるのもいいと思います。
肌への摩擦という点で言うと、手軽な拭き取りクレンジングやスキンケアの浸透を高める拭き取り系のケアなども人気ですが、これらのケアを毎日行うのはあまりおすすめしません。もともとの肌の丈夫さや方法にもよりますが、コットンやシートなどで肌を拭くことはやはり摩擦となりやすく、頻度が多いと肌荒れにつながります。
化粧品が肌に合わなくなったなと感じたら、化粧品を変える前にまず自分の肌の状態が低下しているかも?と疑ってみましょう。真っ赤や痒い状態だけが肌荒れではありません。化粧品に刺激を感じやすい状態というのは、それだけで十分肌からの“SOSのサイン”です。
そして肌はみなさんが思っている以上に敏感です。外からの刺激だけでなく、ストレスや寝不足などによる影響でも肌は敏感に傾きます。肌は生きていて常に揺らぐもの。この揺らぎの幅を小さくするように心がけることが大切です。
たくさんのステキな化粧品がある現代において、「化粧品を使わない方がいい」なんて全く思いません。ファッション同様にスキンケアやメイクを楽しむのは現代人の特権です。でも化粧品を楽しむためにも、まずは健康な肌状態でいることを心がけていただきたいと思います。今日のみなさんの肌状態はいかがですか?これからも「無理せずキレイを楽しむ」ヒントを発信していきたいと思います。
*「セブツー」では、横井彩先生へのお肌の悩みや相談を受け付けています。お問い合わせはこちらまでお気軽にご連絡ください。
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■横井彩 プロフィール
「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」院長。皮膚科専門医、医学博士。2003年に秋田大学医学部を卒業した後、同大学皮膚科で研鑽。2017年藤田医科大学アレルギー科にて講師。2021年に「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」を開院。日本美容皮膚科学会や日本香粧品学会などに所属。