ニキビのケアでまず大切なことは、自分の肌質を知ることです。乾燥肌かオイリー肌か、あるいは皮脂が多いけれど乾燥もあるインナードライや混合肌と言われる状態なのか、皮膚の水分と油分のバランスがどういう方向に傾きやすい肌質なのか考えたケアが大切です。
「乾燥のせいでニキビができる」と考えて一生懸命保湿をしている人がいますが、過剰な保湿、特に油分の与え過ぎはニキビ悪化の原因になることがあります。スキンケアの目的の基本の一つは、水分と油分をバランスよく補って理想に近づけることです。ニキビ肌の場合は、油分が過多にならないよう適切な水分と油分を補うことが大切です。
水分と油分のバランスは、部位によっても異なります。ニキビ肌の人で注意して欲しいのは、同じ顔の中でも、目元と、鼻や顎ではもともとの油分の量(皮脂分泌)が異なるということ。乾燥しやすい部分には油分を足すことも必要ですが、皮脂が多い部位には補う油分は控えめに。
◾️ニキビ肌では洗顔も重要なスキンケア
ニキビ肌ケアで大切なことの一つは、しっかり洗顔することです。しっかり洗顔とは、ゴシゴシ洗うとか、特別な洗顔料を使うという意味ではありません。洗顔料を使って朝晩きちんと洗いましょう、という意味です。昔は、ニキビ肌では顔を洗いすぎている人が多く「洗いすぎは注意」という指導が多かったのですが、最近の若い世代の患者さんは逆の印象を受けます。「洗わない美容」を発信しているインフルエンサーなどの影響なのか、朝は洗顔料を使わずにお湯で洗うだけで済ませてしまう方が多いことに驚きます。
個人的に、ニキビがある若い世代において「洗わない方がいい」肌質の人は少ないと思っています。もちろん肌トラブルがなくて困っていないなら現在の洗顔方法で問題ありませんが、ニキビができている時点でトラブルはあるのでケアを見直してみる価値はあります。分泌されてから時間が経った皮脂は肌トラブルの原因になります。少なくともニキビがある部位や額や鼻や顎などの皮脂が多い部位は朝と晩の2回洗顔料を使って洗うようにしてみてください。
◾️「ノンコメドジェニック」を選ぶ
もう一つニキビケアで重要なのは、保湿やメイク製品でも、ニキビになりにくい化粧品を選ぶことです。ニキビは皮膚の病気であり、化粧品で“治す”ものではありません。ニキビに“効く”化粧品を探す前に、まずは“悪化させない”ケアを意識してみてほしいのです。
「ノンコメドジェニック」または「ノンコメドジェニックテスト済み」という化粧品の用語を見たこと聞いたことがありますか?ニキビの元となる毛穴の詰まりのことを「コメド」といい、このコメドができにくいよう配慮されて作られていることをノンコメドジェニックと言います。ノンコメドジェニックテストが行われた製品は、製品の箱の裏などに記載がされています。
クリニックに来院した方にもまず、「ノンコメドジェニック」を使っているかどうかを聞きます。この言葉はかなり以前からあるものですが、若い方にはあまり知られていない印象です。ノンコメドジェニック製品はデパートの高級ブランドでしか買えないものではなく、ドラッグストアやオンラインなどの身近な製品にも多くあります。ニキビに悩む若い世代の方はまずは「ノンコメドジェニック」な製品から試してみてほしいですね。
◾️油分と水分のバランス
20代後半になってくると、アンチエイジングを気にかけて、シワ予防など少し“こってり“したクリームを使い始める方も増えます。そしてこれらのクリームを肌全体のお手入れに使っている方もいます。肌にとって大事なのは油分と水分のバランスですが、皮脂が多くニキビで悩んでいる部分に対してそのクリームはもしかしたら油分の与え過ぎかもしれません。
同じ顔の中でもニキビができやすい部位と乾燥に悩む部位と両方がある場合、常に同じお手入れで良いとは限りません。と言っても部位によって使う化粧品を変えるのは大変。そこで例えば、顔全体には化粧水や乳液などサラッとした製品を塗る、そして目元や頬など乾燥が気になる部位にだけ“こってり”ケアを足してあげるのがおすすめです。
ニキビに限らず、肌のお手入れは自分の肌質や状態を理解することが大切。油分と水分の理想的なバランスに近づけるようにお手入れしましょう。みなさんのニキビ対策はいかがですか?これからも「無理せずキレイを楽しむ」ヒントを発信していきたいと思います。
*「セブツー」では、横井彩先生へのお肌の悩みや相談を受け付けています。お問い合わせはこちらまでお気軽にご連絡ください。
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■横井彩 プロフィール
「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」院長。皮膚科専門医、医学博士。2003年に秋田大学医学部を卒業した後、同大学皮膚科で研鑽。2017年藤田医科大学アレルギー科にて講師。2021年に「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」を開院。日本美容皮膚科学会や日本香粧品学会などに所属。