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「コム デ ギャルソン」青山店リニューアルに川久保玲がこめた願いとは何か?

Mar 31, 2023.三浦彰Tokyo,JP
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「コム デ ギャルソン」青山店2階の買い付け商品の売り場。動物園の檻といった感じの店内。

3月28日〜30日まで、南青山のコム デ ギャルソン本社で2023-24年秋冬ウィメンズウェアの展示会が行われた。川久保玲による「コム デ ギャルソン(Comme des Garçons)」のテーマは「Return to the source」。原点に戻ることで新しいものが生まれるという意味だ。ますますアートへ傾倒し川久保玲の心象風景といっていいようなコレクションになっている。冒頭のお伽話の世界というか、童心に返ったような不思議な作品にはちょっと意表を突かれた。

展示会では前週の3月25日土曜日に増床オープンした青山店が大きな話題になっていた。「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」が同店に新たに加わることは既報したが、なんと従来の1階(約600平方メートル)に加えて、2階(約400平方メートル)がお目見えしたのだ。

この青山店は、コム デ ギャルソン社の旗艦店として1989年にオープンした。銀座並木通りの「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton、1981年にオープン)」などを例外にして、ラグジュアリーブランドが巨大旗艦店を銀座・青山にオープンするという戦略をとるのは1990年代以降だ。そうした意味では1989年の「コム デ ギャルソン」青山店オープンは、先駆的で画期的な存在だった。

さらに10年後の1999年には店舗の周りをブルーのネットでラップしてシェルター風にした最初のリニューアルを行っていた。

今回のリニューアルは2階のテナントが退出したことによって実現した。1階に加えてこの2階部分も設計した同社の川久保玲社長は「服を大事にするという考え方をもっと推し進めていく。ECが当たり前の世の中だが、作る人と買う人の気持ちが共鳴する実際に見て感じることのできるリアルな店舗が大切」と店舗に関する基本的な考え方を述べる。

また今回の構造については、「1階の既存の空気から静かに続く空気を作ることがテーマ。2階に既存とは異なる世界を作ることは敢えて避けた。1階2階を合わせて一つの空気感ができるということ」と語り、さらに「青山店が買い付けているコム デ ギャルソン社以外の商品は、今のファッションの流れに関係なくスタイルを守り、少しずつ丁寧に服を作り続ける方々の服だ」と改めて同社の基本姿勢を述べている。ECに関しては必ずしも積極的ではない同社が、こうしてリアル店舗の増床を行ったのは注目すべきだ。

具体的に2階は、「ノワール ケイ ニノミヤ」がインショップで入り、「ジュンヤ ワタナベ マン(Junya Watanabe MAN)」と「ジュンヤ ワタナベ アイ(Junya Watanabe EYE)」がインショップでまとまり、「コム デ ギャルソン ガール(Comme des Garçons GIRL)」、「コム デ ギャルソン シャツ(Comme des Garçons SHIRT)」がインショップ展開になり、他にもパール・アクセサリーの「ミキモト(MIKIMOTO)」、ティアラの「スリム バレット(Slim Barrett)」、「クロム ハーツ(CHROME HEARTS)」などのアクセサリー類が棚展開され、あとは買い付けのブランドが加わっている。

同店は土、日曜日には開店前から行列ができることもある人気店だが、リニューアルオープンの3月25日にはいわゆる「顧客」は優先的に10時から入店させたが、それでも11時の正式オープン時刻には50人ほどが行列していたというから、ギャルソン人気は健在なようだ。

余談だが、4月に入社する同社の新入社員は27人(女子16人、男子11人)。アパレルメーカーの多くが採用を中止し、ましてやデザイナー企業ではさらに厳しい採用事情になっているが、ここ3年のコロナ渦中でも、こうした採用が続いているという同社の底力には驚かされる。

EC化が生き延びるための絶対条件と考える企業がほとんどのファッション&アパレル業界にあって、超アナログ企業のコム デ ギャルソン社が放つ輝きを考えてみることは大きな意味がありそうだ。

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