
「リゴレット」などを始めとする飲食事業を展開するHUGEが、Lキャタルトン(L Catterton)との戦略的パートナーシップ契約の締結でIPO(新規上場株式)にトライアル。巳之助の結論からいこう。今回の話は、単なる上場準備ではない。HUGEが「日本の外食会社」から、「世界のレストラングループ」に変わる分岐点だ。IPOは目的ではなく、世界ブランドになるための手段だとにらんだ。
HUGEに近づいたのは、ただの金融投資家ではない。LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)の中核ファンドであるLキャタルトンであり、ここが決定的に重要だ。Lキャタルトンは、短期で株価を上げて売り抜けるファンドではない。ブランドを磨き、世界に横展開し、産業そのものを育てる側のファンドだ。外食を「消費」ではなく「文化資産」として扱う視点を持っている。
HUGEは2005年創業。「リゴレット」「アシエンダ」「アジアン」業態などを軸に、現在40店舗超。直近ではニュウマン高輪に約300坪で4業態同時出店。2024年度は純利益約4億円、利益剰余金10億円超まで回復した。ここで重要なのは、回復したことより「戻り方」だ。急拡大ではない。人材とオペレーションを壊さず、坪効率と客単価を丁寧に積み上げている。これは上場企業向きの数字の作り方だな。
純利益約4億円、利益剰余金10億円超まで回復しているが、東証グロースの時価総額100億円には単独では届かない。だからこそ、今回のファンド傘下入りは「時間と設計を買う」判断だ。Lキャタルトンは、外食や消費ブランドで世界中に実績がある。人材、仕入れ、出店立地、ブランド設計、M&Aまでかなり踏み込むファンドだ。それでも話が進むということは、HUGE側にも相応の覚悟がある。
では、ファンドの狙いは何か。売上を2倍にすることではない。それだけなら国内資本でもできる。狙いは、日本発のレストランブランドをアジア、中東、欧州に横展開できる「型」にすることだ。HUGE単体の成長ではなく、将来ラグジュアリーグループのバックエンドとして機能し得るかどうかを試す段階に入りつつあるとも読める。そのためには、ガバナンス、開示、経営の透明性が不可欠になるんだ。
だが、IPOするには、売上2倍だけでは足りない。巳之助はここが一番のポイントだと思っている。必要なのは創業者依存からの脱却、店長とチーフの再現性、海外展開できる業態数、人材育成の速度、内部統制と数字の説明力だ。そして特に重要なのは、創業者 新川義弘氏という強い個性をどう「組織の力」に変換するかだ。これは簡単ではない。だが、Lキャタルトンはそこを一緒に共創したいはずなんだ。
何年後に何が起きるか。早ければ3年、遅くても5年と読む。その頃、HUGEは日本企業という枠で語られていない可能性がある。上場市場も、国内とは限らない。IPOはゴールではない。世界に出るための通過点だ。テーマは極めて大きい。IPOになる時は、国内企業という枠を超えているかもしれないな。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。








![[[name]]](/assets/img/common/sp.png)