
アンドエスティホールディングス(旧アダストリア)は9月17日、連結子会社のゼットンにおいて、財務経理部門の元責任者による業務上横領が発覚したと発表した。横領は2020年から2025年にかけて複数回にわたり行われ、総額は約1億7000万円に上る。元従業員はゼットンの預金口座から現金を引き出して私的に流用し、会計処理を不正に操作することで隠蔽していた。7月下旬の内部告発を契機に社内調査が開始され、弁護士など外部専門家を交えて事実が確認されたという。
不正を認めた元従業員は懲戒解雇され、同社は損害回収や刑事告訴を進めている。現時点で他の従業員の関与は確認されていない。本件は過去の決算に大きな影響を及ぼすものではなく、決算修正の予定もなく、今期の業績予想にも変更はないとされる。
だが、経営責任を明確化するため役員の処分も公表した。アンドエスティホールディングスでは木村治社長が月額報酬の10%を3カ月間減額、福田三千男会長や福田泰生専務も同様に減給処分とした。ゼットンでは鈴木伸典会長が辞任して取締役に降格、社長を含む複数役員に対しても一時的な報酬減額が科された。
今回の横領事件は、金額の大きさだけでなくガバナンス体制に対する信頼を揺るがすものであり、同社は信頼回復に向けてグループ全体で内部統制を徹底するとしている。