金建希氏をめぐっては、株価捜査や公認候補選びへの介入、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)幹部からのあっせん収賄など16件の疑惑について捜査が進められている。
旧統一教会側からの贈物も高級ブランド品が中心だった。2000万ウォン(約210万円)相当の「シャネル」のバッグ2個と、ダイヤモンドジュエリーで有名な英国「グラフ」の6000万ウォン(約630万円)相当のネックレスなどが、仲介役の占い師に託されたとされる。
これまでの捜査では、金建希氏の最側近だった大統領室の前行政官が「シャネル」のバック2個を追加料金を払って、靴1足とバック3個に交換したことがわかっている。前行政官は「交換した商品はすべて占い師に渡した」と供述し、占い師の側は「受け取った品はすべて紛失した」と主張している。
捜査にあたっている特別検察は、統一教会側の購入領収書や前行政官の自宅から「シャネル」製品の箱を押収したが、問題の「シャネル」の靴やバッグの実物は押収できていない。
疑惑の「シャネル靴」はどこに消えたのか?金建希氏の自宅からは「シャネル」の靴12足が押収され、サイズはいずれも26センチだった。
当初、交換されたサンダルは韓国サイズ25センチとされていたが、最近になり欧州39サイズだったことがわかった。欧州39サイズは韓国の25~26センチに相当する。
金建希氏は所有する靴は欧州サイズの40~41と主張しているが、特別検察はこの靴が統一教会側のバックと交換されたものと同一である可能性があると見て調べている。
■ダイヤモンドネックレスはどこに?
教団が贈った「グラフ」の超高級ダイヤモンドネックレスの行方もわかっていない。占い師はこれまで、「ネックレスは紛失し、金建希氏には渡していない」と主張してきた。
しかし、新たにこの主張を覆す物証の存在が明らかになった。贈物を託した統一教会の元幹部のもとに、贈物を渡したと報告する携帯メールが送られていたのだ。
「頼まれた物を女史(金建希氏)にちゃんと渡した」
「女史がネックレスをもらって(ダイヤが)大きいので驚いていた」
また、受け渡しがなされたと見られる時期に尹前大統領の自宅があるマンションに占い師が出入りした記録も見つかった。金建希氏は聴取の中で「同マンションには他にも占い師の顧客が多くいる」「その時期は休暇で不在だった」と接触を否定している。
■「ヴァンクリ」ネックレスの出処
金建希氏は2022年、ファーストレディとして当時大統領だった尹錫悦氏のNATO歴訪に同行した。その期間中に開かれた晩餐会で着用した「ヴァン クリーフ&アーペル」のネックレスをめぐっても疑惑が持たれている。
金建希氏が着用したのは「ヴァン クリーフ&アーベル」のスノーフレーク。雪の結晶を模ったプラチナの台座に、3.05カラットのダイヤモンド71個が埋め込まれたハイジュエリーで、韓国では約6000万ウォンで販売されている。
韓国の公職者倫理法は、500万ウォンを超える宝飾品については申告を義務付けているが、この時着用した装身具は申告されていなかった。金建希氏側は当初「知人から借りた」などと釈明していた。
しかし、その後の捜査で、このネックレスの模造品が金建希氏の親戚の家から発見されると、「2009年から2010年にかけて香港で模造品を購入した」と説明を変更している。特別検察側はこのネックレスが2015年に発売されたと見ており、金建希氏の供述を疑問視している。
ただ、「ヴァン クリーフ&アーペル」の公式SNSには、2011年にスノーフレークに似たネックレスの写真がアップされており、金建希氏が着用したものがどちらなのかは判別が難しいとの指摘も出ている。
金建希氏は特別検察の事情聴取で、ほぼすべての疑惑について否定している。令状審査で身柄拘束が認められれば、疑惑の解明に向けてさらに厳しい追及を受けることになる。
華麗なファッションで世界の注目を集めた韓国ファーストレディから一転、拘置所収監の身となり、拘置所服に身を包むことになるのか。金建希氏は運命の岐路に立たされている。