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ファッション業界最大の謎「シーイン」が大阪・心斎橋にポップアップショップをオープン

Oct 29, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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「SHEIN POPUP OSAKA」

現在ファッション業界最大の「謎」になっているのが中国企業が運営するD2Cブランド「シーイン(SHEIN)」だ。同ブランドが10月22日から1月27日まで大阪・心斎橋にポップアップショップを開いた。場所はかつて「ユニクロ(UNIQLO)」心斎橋店があった場所で連日若い女子を中心ににぎわっているという。なぜ「謎」なのかと言えば、すべては非上場企業であることが原因だ。上場する必要はないのだろうか?金融機関や投資ファンドから簡単に融資を受けられるから必要ないのだろう。その年間売上高は2021年に前年からほぼ倍増の200億ドル(3兆円、1ドル=150円で計算。円安が急激に続いているために円ベースだとどんどん増えている)だという。これは「ZARA」をメインブランドにするインディテックスの2億9700万ユーロ(2022年1月期、約3兆3171億円、1ユーロ=146円換算)に次いで世界第2位のアパレル企業になる数字だ。これが本当なら逆転して第1位に躍り出るのも時間の問題だ。この数字は中国の有力な経済メディア「晩点(Latepost)」による報道だ。日本経済新聞もこれをもとにした報道を行なっているから、どうも本当らしい。しかし1兆5000億円の企業がたった1年で2倍になるなどというのは、少なくとも私の常識では絶対に起こり得ないのだが。

まず第1に、一気に生産キャパを1兆円分から2兆円分に増やせるのか?第2に1兆円の配送体制を2兆円分の配送体制に1年でシフトできるのか?第3に1兆円分のEC受注体制を2兆円分の受注体制に1年間でシフトできるのか?という3つの疑問が浮かぶ。特に第1の生産キャパの問題だが、これは現在300から400のコアサプライヤーや1000を超える協力サプライヤーがあり、納期は7〜11日だというのだ。これは「ザラ(ZARA)」や「H&M」などに比べて半分の長さだ、当然それに見合うボーナスも工場には支払われている。

そして、この商品展開の速さに加えて、なんと言っても、消費者の支持を得ているのは、「ザラ」はもちろんのこと「H&M」と比較しても、その70%程度の価格であるのは言うまでもない。なぜ工場にボーナスを支払っていながら、そんな安い価格が可能なのか?

それは一にも二にも、「シーイン」が店をもっていなくて、かつ販売員がいないため。そして、売れ筋を見つけサプライチェーンを機動的に動かすITチームが十全に機能しているため。この2点に尽きるというのだ。アパレル卸売業はインディテックス、H&M、ファーストリテイリング、GAPに代表されるSPA(アパレル製造小売業)の登場で絶滅危惧種になったが、さらに進化したD2C(Direct to Comsumer)業態の「シーイン」の登場で、SPAすらもそのシェアを喰われ絶滅危惧種になるのだろうか。

ただし、「シーイン」の売上規模とかサプライチェーン(注文の殺到で幾度もパンク状態になっていると言われる)については、前述したように非上場企業であり、中国特有の「白髪三千文」的な誇大な自己表現なのではないかという疑問はぬぐえない。確かに「ザラ」はまだまだ安くできるだろうし、さらに安い「H&M」についてもそうした余地はある。安さだけなら、「シーイン」はアイルランド発のファストファッション「プライマーク(PRIMARK)」と大体いい勝負をしているように思う。まあ非上場と秘密主義で「謎」の存在なっているのもいいが、深く潜航せずに上場して全てを明らかにしてもいいと思うが、そうできない事情があるのだろうか。

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