当然のことながら第2四半期、通常決算も上方修正されている。通期決算は、前期決算発表時から以下のように修正された。
・売上高:1850億円→1888億円
・営業利益:70億円→100億円
・経常利益:63億円→90億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:40億円→50億円
・年間配当金:14円→16円
コロナ禍以前の供給過剰による不振、コロナ禍によるダメージを払拭した完全復調と投資家は考えているようだ。まず、百貨店卸し企業と見られるオンワードHDだが、2023年2月期の中核企業オンワード樫山の百貨店売り上げ比率は41.2%まで下がっているのだ。さらに同社のEC比率は25.8%まで急上昇している。うち自社EC比率はなんと86.7%である。これは構造改革がこの5年ばかりで完全に成就したと見てよいだろう。さらに今期以降同社が期待しているのはOMO(オムニチャネル)サービスの導入の「クイック&トライ」店のさらなる拡大だ。加えて資本業務提携(出資比率20.2%)したZ世代に強いファッション小売りのWEGO、さらに資本業務提携(出資比率34.0%)した繊維商社のサンマリノとの連携効果も期待されている。いよいよアパレル業界トップ企業に活力が漲ってきたようだ。
オンワードHDの株価は、リーマン・ショック前の2005年12月30日には2320円という終値をマークしている。これが長期低迷して2020年12月11日終値ではその10分の1以下の204円という水準まで下落していた。少なくとも、最高値の半値である1000円が当面の「控え目」な目標になるだろう。
株価騰落率第2位(+34.3%)はサマンサタバサジャパンリミテッドだ。同社は7月14日に2024年2月期第1四半期(3月1日ー5月31日)決算を発表したが、減収で引き続き赤字決算だった。売上高営業損益率が前期の−5.0%から−1.4%に大幅改善されたのが注目された程度。株価が大きく動いたのは7月7日だが、これはディズニー創立100周年(10月16日)を記念し、7月8日から10月15日まで100日間、毎日異なるキャラクターのアイテムを1日限定で発売すると同社が発表したため。アイテムは「サマンサタバサ(Samantha Thavasa)」のロングセラーアイテム「レディアゼル」をそれぞれのキャラクター仕様にデザインした「セレブレーション・レディアゼル」になる。果たしてディズニー100周年で長年の不調を脱出できるのかどうか。
上昇率第3位(+28.9%)は良品計画だった。7月7日に発表した2023年8月期第3四半期決算翌日の7月8日から買いが入ったもの。第3四半期(2022年9月1日〜2023年5月31日)の9ヵ月累計では増収だが営業利益前年比−8.7%、経常利益同−15.5%、親会社株主に帰属する当期純利益同−6.6%だが、直近3カ月(2023年3月1日〜5月31日)について見れば、例えば経常利益は前年同期比69%増の135億円と拡大しており、復調は明らか。これで買いが入ったようだ。
一方、騰落率ランキングの最下位(82位)は下落率11.5%のハニーズホールディングスだった。7月11日に発表になった2023年5月期決算は素晴らしいパフォーマンスを見せた。主要数字は以下の通りだ(1億円以下は切り捨て)。
・売上高:548億円(前年比+15.1%)
・営業利益:76億円(同+53.6%)
・経常利益:80億円(同+58.6%)
・親会社株主に帰属する当期純利益:53億円(+64.0%)
しかし、2024年5月期の業績予想は、3.8%の増収ながら。ぞれぞれの利益が73億円、75億円、48億円といずれも減益予想。この弱気は業績予想が投資家から嫌がられて、売られたようだ。加えて、全社の月次売上高が、3月前年比119.4%、4月同112.4%、5月同108.4%、6月同105.4%と徐々に悪化しているのも嫌われたようだ。