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2月の株価上昇率トップのルックHDの好決算を支えた意外な要因とは?

Mar 2, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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ルックホールディングス本社ビル(PHOTO:SEVENTIE TWO)

SEVENTIE TWOではファッション&アパレル関連の83銘柄を選び、月ごとの騰落率をランキングしている。今回は2022年2月の騰落率ランキングを発表する。

2月の日本株の概況だが、日経平均株価は2月1日に2万7167円14銭で始まり、2月28日に2万6526円82銭で終わった。640円32銭の値下がりで、率にして2.4%の下落だった。なんと言っても、2月24日にロシアがウクライナに侵攻したのがショッキングで、この日、日経平均は2万6000円をあっさり割り込んだ。この日は2万6281円35銭で始まり2万5970円82銭の310円53銭安で終わっている。しかしその後の立ち直りは早く、翌日以降は2万6000円台をキープしている。予断は許さないが、ウクライナ侵攻については一過性のショックだと考えてよさそうだ。先月も書いたが、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ実施が3月にも本格的スタートになる予定だし、またウクライナ侵攻の影響もあり世界的なインフレがさらに悪化していることも株価を押し下げる原因になっている。もちろん1月から猛威を奮っているオミクロン株による第6次感染拡大も大きなマイナスインパクトであることは言うまでもない。一方、この間SEVENTIE TWOが選んだファッション&アパレル関連83銘柄の株価合計については、−3.1%だった。83銘柄中値上がりは37銘柄、変わらずは1銘柄、値下がりは45銘柄だった。

株価上昇率トップ(+27.1%)はルックホールディングだった。2月14日に発表した2021年12月期の業績が驚異的だったために、2月14日の終値1384円を底値にして、1600円台まで株価が上昇している。

その2021年12月決算だが:
 ・売上高:410億6500万円(前年比+10.9%)
 ・営業利益:27億2500万円(前年の4.2倍)
 ・経常利益:29億7300万円(前年の3.5倍)
 ・親会社株主に帰属する当期純利益:19億9100万円(前年の4.6倍)

という内容で、売上高こそ及ばないが利益に関してはコロナ禍前の2019年12月決算を上回る数字だ。年間配当も30円から40円に増配している。同社の1株あたりの純利益は259円。日本株は1株あたりの純利益の平均20倍程度まで現在買われているから、それで計算すると妥当株価は5180円ということになる。いくら成長が期待できないファッション&アパレル株でもその半分の2590円程度でも不思議ではないので、今の水準でも割安という見方もできる。

その好調要因だが、第一に韓国事業の好調が挙げられる。子会社のアイディールックおよびアイディージョイによる韓国事業は売上高177億5600万円(前年比+18.1)、営業利益18億9300万円(前年の2.7倍)と弾けた。韓国についで、日本では2019年に109億円で買収したイタリア皮革ブランド「イル ビソンテ(IL BISONTE)」の新規出店や「A.P.C.」のコラボ商品販売などが奏功して主力ブランドは前年同期を上回り、またECも好調で売上高210億7400万円(前年比+4.9%)で、営業利益は11億3500万円(前年の2.7倍)だった。

同社の旧社名はレナウンルック。レナウン、ダーバンの両社が合併(もともとダーバンはレナウンからメンズ事業が分化してできた企業)してレナウンになっていた。2020年に経営破綻して民事再生を申請したが主要事業売却により民事再生が認められずに消滅。また婦人服販売のレリアンも2009年に伊藤忠商事が52.8%の株を取得しその連結子会社になっているから、ルックホールディングスは名門レナウンの源流を受け継いでいる唯一の企業ということになる。しかし、ルックHDは婦人服の百貨店卸しをメイン事業にした従来の業態から、前述した「イル ビソンテ」やライセンス生産しているフィンランドのブランド「マリメッコ(Marimekko)」、「A.P.C.」、また合弁で輸入・販売の日本法人を設立したオランダのデニムブランド「デンハム(DENHAM)」などを擁する総合的なファッション企業へ変貌している。現在韓国事業が主力になっている点が一抹の不安材料だが、今後に注目したい企業である。

上昇率2位(+21.0%)はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)だ。国内リテールではディスカウントのドン・キホーテが中心で他に長崎屋、ユニーなどを擁する。昨年4月27日に、大原孝治前社長が自社株TOBに関する情報を友人に教えたというインサイダー取引で懲役2年執行猶予4年の判決を受けるという不名誉きわまるスキャンダルがあったものの2021年6月期には32期連続増収&営業利益増益というとんでもない偉業を達成している。しかしコロナ禍で33期連続はどうも難しそうだという見方が昨年末から強まっており、それが株価低迷の主因になっていた。2月10日に発表した2022年6月決算第2四半期決算では

 ・売上高:9176億8000万円(前年比+7.6%)
 ・営業利益:436億4400万円(同−11.5%)
 ・経常利益:445億2300万円(同−7.6%)
 ・親会社株主に帰属する四半期純利益:301億4800万円(同−7.6%)

増収ではあったが全利益段階で減益になった。しかし、通期決算予想では期初に発表した数字に関して変更はなく、売上高1兆8700億円(前年比+9.4%)、営業利益850億円(同+4.6%)、経常利益830億円(同1.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益576億円(同+7.2%)を引き続き公表している。市場はこの「自信」を評価したようで、週明けの2月14日には1900円台突入。久方振りに2000円台突入かと期待を抱かせている。現在到来しているインフレ時代の星としてのディスカウンターの帝王ドン・キホーテに期待するのは当然の成り行きだが、PPIHの1株当たりの純利益は約50円。現在の1880円はその39倍にあたり買われ過ぎという評価も当然ある。

上昇率第3位のスノーピーク、同第4位のコメ兵ホールディングスに関しては、いずれも上昇率上位の常連銘柄であり、最近は高くなれば売られ、安くなれば買われるという繰り返しになっている。SEVENTIE TWO1月7日掲載の2021年株価上昇率年間ランキングでも第1位と第3位になっており、最近の好調の理由についてはその記事を参照していただきたい。

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