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東京都現代美術館の「ディオール展」に行ってみたが、ラグジュアリーブランド好調の理由が分かった!

Apr 25, 2023.三浦彰Tokyo, JP
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「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展から

東京都現代美術館で12月21日から5月28日まで開催中の「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展に4月22日に行ってみた。東京都現代美術館は東京都江東区木場という不便きわまりない場所での開催だが、連日「満員御礼」で当日券は早々に売り切れて、ネットで予約購買した者のみが入場できるという盛況ぶりだ。また高校生以下は入場無料だ。若い人たちに「ディオール」という「現代美術」の素晴らしさを味わってほしいという美術館側とディオール側の思惑が一致したようだ。

ディオール回顧展は日本で何度も開催されてきたがこれほどの規模の開催はなかったと思う。加えてアメリカ・ニューヨークで建築事務所OMA代表を務める建築家の重松象平による大胆な空間構成が素晴らしいインパクトを与えている。重松はアメリカのデンバー美術館とダラス美術館で開催された「ディオール:パリから世界へ」でも回顧展の会場構成を担当している。重松は、「カーサブルータス」(マガジンハウス)のインタビューで「ファッションの展覧会が世界的に人気を集めている。中でもディオールは展示においても先駆的なメゾン。今回はより振り切った構成を実現した」と語っている。

実際に行ってみて驚いたのは、入場者の90%を占める女性のうち大半が20代であること。前述したように高校生以下は入場無料なのだが、10代女性ではなく20代女性である。半年間にわたって20代女性がこれだけディオール回顧展にやって来るということのメリットは計り知れない。極端な話、この展示を2時間ほど見れば「ディオール教」に洗脳されるといっても良いほどの内容である。

現在年商11兆円を誇る世界最高のラグジュアリーコングロマリット企業であるLVMH(その大半のブランドは買収したもの)の総帥であるベルナール・アルノーがLVMH設立(1987年)以前の1984年に買収を手掛けた最初のブランドが「クリスチャン・ディオール」なのである。当然のことながら「ディオール」に注ぐアルノーの愛情が格別のものであるのは言うまでもない。そのライバルブランド「シャネル」に負けるな!というアルノーの意気込みが伝わって来るような今回のディオール展なのである。残念ながらすでに全世界で年商1兆円を突破したと言われる「シャネル」に対して、「ディオール」の年商は60〜70%ぐらいに止まっていると思われる。

前述の重松氏が述べているように「ファッションの展示会が好評」と言っても、開催できるだけの「歴史」「伝統」「伝説」があるのは、LVMH、ケリング、リシュモンが大部分を保有している「ラグジュアリーブランド」に限られるのだ。コロナ禍にも拘らずラグジュアリーブランドが好調を続けているのはそうした背景があるのではないか。

こうした言い方をすると誤解を招く危険性があるが、今回の2023−24年秋冬のニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ、東京のコレクションウィークを俯瞰すると、いわゆるデザイナーのクリエイティヴィティに頼ったブランドのコレクションに「新しさ」が感じられず、かといって全体に大きなトレンドがあるわけでもない。全体的に停滞している印象だ。こうなれば、マーケティングに秀れたラグジュアリーブランドが、プロモーション、大量の広告で有利な商戦をすすめるのは目に見えている。

ディオール展に加えて、これもLVMHのブランドだが、「フェンディ」は4月20日から5月8日まで、「フェンディ ハンド・イン・ハンド エキシビジョン〜卓越した職人技への称賛」展をJR原宿駅前のイベントスペースで開催する(入場無料)。ラグジュアリーブランドのプロモーション攻勢が続く。

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