新津:現在、団体旅行のみが制限されていますが制限の更なる強化や長期化の想定が必要でしょう。中国からは、昨年3カ月間に214万人(2~4月)の訪日ゲストがあり、3,638億円(1~3月)の消費額(買物代)となっています(出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」)。影響期間は、収束までの期間について専門家も予測できない状況であり難しいところですが、3カ月で約100万人、1,300億円程度の減少(約5割減)をリスクシナリオとして見据える必要があるでしょう。収束まで時間がかかる事態になれば、さらに影響は大きくなります。
SVT:では、中国人観光客の減少を補える国・地域はありますか。
新津:訪日全体の30%を占める中国人ゲストの客数減を補うことは、簡単ではありません。韓国・台湾・香港市場での増加は難しく、現在10~30%増のトレンドにあるASEAN・欧米豪市場に期待がかかるものの、単価アップに工夫が必要でしょう。ショッピング領域に限って言えば、比較的単価の高いタイやベトナム・ロシアのお客さまをターゲットにしたいとの小売店の声が聞かれます。
SVT:JSTOの会員に対して、助言や指示をしていることはありますか。
新津:指示をすることはありませんが、各社からの問い合わせには、下記のようにアドバイスしています。
国際観光ビジネスには様々なリスクがつきものです。これまでにも、国際紛争や天変地異、為替変動によって大きな売り上げ影響を受ける事例がたくさんありました。こういったビジネス環境を前提に取り組む際には2つの心構えが必要でしょう。
1つ目は、リスクが発生することを前提とした心構えです。万が一の事故が発生した際に、仕入れや経費の変更をしうる、柔軟な計画立案が必要でしょう。2つ目は、情報発信・コミュニケーションの継続です。訪日期待が薄くなった時に、急に情報発信を中止し、コミュニケーションをやめる企業は少なくありません。これは、お客さまから見たら、都合のいい時ばかりラブコールを送り、苦しい時にいきなりそっぽを向く態度に映ってしまいます。