創業者ジャニー喜多川(1931~2019)の性加害に関するジャニーズ事務所初の記者会見が9月7日に開かれた。5月14日夜にジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長(57歳)が動画出演する形で「謝罪」を行ったが、「目の前に被害にあったと言われる方々がいらっしゃることを、私たちは大変重く受け止めております」という発言にとどまり、創業者(藤島社長の叔父)の性加害については認める発言はしなかった。その後、事務所が設置した再発防止特別チームの調査を受け入れて今回の記者会見になり、創業者の性加害の事実を認めた謝罪会見になった。再発防止特別チームは、創業者の性加害は1950年代以降、2010年代半ばまで行われ、少なくとも数百人の被害者がいると報告していた。
今回の記者会見は、午後2時から午後6時まで4時間にわたって行われた。出席者は藤島前社長、新社長に就任した東山紀之(56歳)、ジャニーズJr.を養成するジャニーズアイランド社長のタレント・井ノ原快彦(47歳)、そして弁護士の4人だった。
ほとんどの識者が驚いたのは、9月5日に引責辞任した藤島前社長が代表取締役にとどまっている点。どんな役割を担うにせよ、代表権のある取締役になるのでは何も変わらないということだ。どこが「引責辞任」なのか。「代表権があった方が救済・補償が進めやすい」(藤島前社長)というが、逆に言えば、これでは藤島代表取締役の印があれば独断でなんでもできるということ。会社というものの基本を知らないのではないか。
また性加害を数百件に及んでいる創業者の名前を冠した社名のジャニーズ事務所の変更がなかった点も識者を驚かせた。「社名変更がないというのは常識はずれだ。スターリン株式会社やヒトラー株式会社と同じだと思うが?」という質問(YouTube番組「一月万冊」のレギュラー出演者で作家の本間龍氏)があったが、その通りで東山若新社長は「若干の含みを残してはいる」語るが、「創業者の名前と同時にこの事務所に集った若者たちの情熱も著している」とも語っている。
勘ぐればすっかり地に堕ちた創業者=叔父の名前をせめて社名に残そうという姪の希望が強く反映したのではないか。しかし社名変更なしなら少なくとも海外では全く相手にされないことだけは確かだ。
そして、新社長に就任した東山紀之に対しても識者は不安を隠せない。芸能活動は年内で終わると言うが、ジャニーズ事務所最年長でジャニー喜多川のDNAを最も受け継いでいる男と目される東山の起用は「解体的な出直し」(東山)をしなければならない事務所にふさわしいのか。
実際は自分に代わる新社長を外部に探していたが見つからず、苦肉の策で東山の起用になったという。しかし、この難局を芸能人が乗り切れるものなのか?全く疑問である。
事実早くもこんな質問が飛んでいた。「2005年出版の元ジャニーズJr.の山崎正人著『SMAPへーそしてすべてのジャニーズタレントへ』の中には、東山さんがパンツのない方に『自分のパンツをはけ』と言ったり、電気アンマをしたり、ジュニアを前にご自身の陰部を晒し『俺のソーセージを食え』って見出し取られてますよね?」(東京新聞の望月衣塑子記者)。これに対しては、それ以前の「あなた自身は性加害をされたことはないのですか?」という質問へのきっぱりとした「いいえ」とは違って、具体的な出版物からの引用に対してはシドロモドロの回答。この東山新社長がカイライ社長であることがバレてしまった瞬間だった。
そして藤島前社長が保有しているジャニーズ事務所株式100%にも言及があったが、これについては「これをどうするかは簡単な問題ではない」と藤島前社長ははぐらかす。要するにこれを手離すつもりはないということだ。これを元にして被害者救済・補償のための基金を設立するとかいくらでもアイデアはあるはずだ。「私財を投げ打ってでも救済・補償する」という言葉が出るべき場面だが、もそうした発言は一切なかった。社長は辞任しても代表取締役を続け株式を100%保有している人物に逆らえるはずがないのだ。藤島前社長は記者会見中に席をはずしたり、謝罪会見であるのに終始「なんで私がこんな席にいなきゃならない」という撫然たる表情が表れており、記者を睨むような視線もたびたび。この事務所がおかれている危機的な状況がまるで分かっていないようだった。
すでに日本航空、東京海上日動火災保険などが所属タレントのCM契約を今後更新しない、あるいは今後起用しないなどの方針をこの日明らかにする大手企業も現れ始めている。