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講談社「ミモレ」を去る大草直子を送る言葉

Mar 11, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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スタイリスト&エディターの大草直子(1972年生まれ)が、講談社のウェブマガジン「ミモレ」のコンセプトディレクターを3月いっぱいで退くという。講談社がまさに三顧の礼で大草直子を迎え「ミモレ」をスタートしたのは2015年1月20日。「大草直子を使った雑誌は必ずヒットする」という都市伝説がまだマカリ通っていたのだろう。大草は立教大学を卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社し、「ヴァンテーヌ(Vintaine)」(現在は休刊)編集部に配属されたが5年で退社。理由はサルサダンスにハマり「キューバに行きたかったから」。その後日本に戻りスタイリストとして「グラツィア(Grazia)」(講談社、現在は休刊)、「ヴェリィ(VERY)」(光文社)、「オッジ(Oggi)」(小学館)」などに編集者・スタイリストとして関わってきた。その実績を買われて、講談社としては清水の舞台から飛び降りるつもりで招いた同社初の外部招聘編集長だった。

2018年7月からは大森葉子チーム長(この方もプロパーではない)に編集長をバトンタッチし、コンセプトディレクターになっていた。実は、大草は昨年10月28日に紙媒体「アマーク(AMARC magazine)」を主宰し創刊していたのでそちらの方が忙しくなったのか。それとも今年50歳になるので心機一転ということなのか。しかし、今どき紙の媒体を1650円で販売しようというのだが、どんな勝算があるのだろうか(第2号は6月10日発売)。昨年NHKで放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」に「泣いて、笑って、オシャレして」の副題で登場した大草は「吟味した情報を、魂のこもった強く美しい写真と100年残る言葉でまとめあげた」と「AMRC magazine」について語っているが、こんな歯の浮くような惹句を書く厚顔ぶりに呆れるのを通り越して感心してしまったのを思い出した。

今回の退任については、「人生の後半戦の過ごし方を考えたとき、もっと学びたい、もっと勉強したいーという、意外な欲求がむくむくと大きくなってきました。お金を頂くプロの『伝え手』として、経験値だけで語れることは、残りわずかかなと思います。そして、どうしてこの仕事を選んだのか、ということを今一度深く考えた時、もっともっとデータとエビデンスを手にして、情緒的にだけではなく論理的に伝えたいなと思ったのです」と「ミモレ」で語り、これからは学校や講座に通うのだという。教えるのではなく学ぶというのだから驚いてしまう。

しかし、殊勝な心掛けだと思う。データとエビデンスが大切というならある意味では今までの自己否定にもつながりかねないのではないかと笑ってしまうが、気付くだけマシである。世の中には自分の趣味・嗜好で人のファッションを勝手にいじりまくっているスタイリストという蛮族がなんと多いことか。

それとこれを機に大草直子に注文がある。いつも笑顔のポートレートばかりでいささか食傷気味である。銀座のクラブのママではあるまいし、これからはデータとエビデンスをベースにしていくなら、シリアスな写真を使っていただきたいと思うのだがいかがだろうか。「オシャレもキャリアも、ピークを60歳に持っていく」という大草のこれからの10年間を見守っていきたい。

 

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