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講談社、集英社、小学館の出版大手三社による新「取次」設立の狙いとは何か?

Sep 16, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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日販本社

日本経済新聞は5月13日付のイブニングスクープとして、「講談社、集英社、小学館の出版大手3社に丸紅を加えた4社で共同出資会社を設け全国の書店に書籍や雑誌を届ける流通事業を開始」の記事を掲載した。

しかし、トーハンの現在の株主は第1位株主は講談社5.58%で以下出版社の出資は小学館5.42%、文藝春秋2.98%、旺文社2.84%(2020年9月時点)、日販ではその持株会社の日販グループホールディングの第1株主は講談社で6.33%、小学館6.27%、光文社2.95%、文藝春秋2.40%、秋田書店2.35%、KADOKAWA2.13%、TSUTAYA1.97%、旺文社1.91%(2020年3月時点)ということで、講談社はいずれも最大株主であるにもかかわらず、なぜ新しい「取次」を作らなければならないのか?という疑問が湧く。日本経済新聞の記事によれば、今回の新「取次」設立の目的は書籍流通のデジタルフォーメーション(DX)だという。現在の大手取次の「パターン配本」という画一的な配本では返品率は40%弱と高止まりしている。これをDX流通によって、売り場面積、過去の販売データ、地域性などをもとに、書店ごとにニーズのある本や数量を人工知能(AI)で予測。完売率を上げて返品に伴う無駄な配送を減らし、出版社や書店が負担している流通コストを2~3割減らすとしている。

講談社が2大取次の最大株主といっても、せいぜい5~6%というレベルのもので、それで特別優遇を受けているとも思えず、むしろ返品増大の負担を分担するなど同社を始め大手出版社は現在の出版流通に大きな不満を抱いているのが今回の新取次設立で明らかになったと言える。ある意味では、これで大手取次2社のケツを叩くというよりも三下り半を突きつけたと見た方がいいのかもしれない。

大手3社はともに、漫画、権利ビジネス、デジタル出版、不動産の4本柱で、出版不況と言われる中でも好調な決算を叩き出している。今回の動きはAIを使ったDXで「紙媒体」でも儲けて見せるという強い意欲が感じられる。前述したように「パターン配本」を基本にした従来型取次では、この紙媒体の出版不況を乗り越えることはできないということなのだろう。

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