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三浦彰WWDジャパン元編集長が回顧する2020年その3「コロナ禍でも活況の株式市場と急増するTOB」

Dec 11, 2020.三浦彰Tokyo, JP
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2020年において特筆すべきは、「第二次世界大戦後における人類最大の危機」とまで言われるコロナ・パンデミック下において、ニューヨーク(NY)ダウ平均株価は2月12日に2万9551ドルをつけた後は3月23日の1万8591ドルまで急落したものの、その後活況を取り戻して、史上最高値を更新し11月25日には遂に3万ドルの大台に突入したことだ。その後も3万ドル付近を上下する動きを見せている。このNYダウ平均に追随して、日経平均株価も同様な動きを見せた。1月22日に2万4031円をマークした後に、新柄コロナ感染拡大を懸念して3月19日の1万6552円まで急落後は、持ち直してバブル経済崩壊後の1991年5月以来実に29年ぶりに2万6000円台を回復している。

この「危機的状況」における株高は、決して巷間言われるような「ワクチン期待相場」ではない。現在の株式市場が正常に機能していないことを証明している。NY株式市場にはFRB(連邦準備委員会)の、東京株式市場には日銀のそれぞれ巨額の資金が流入しているのだ。その他にも、低金利で行き場を失った余剰資金が株式市場に流れ込んで来ている。いわゆる「過剰流動性相場」と言われる典型的な相場展開になっている。「上がるから買う。買うから上がる」というバブル相場がその本質である。

もうひとつ株式市場で注目しなければならないのは、TOB(株式公開買い付け)の異常なほどの大量発生である。しかもTOBの規模が巨大化している。日本では、9月30日に発表されたNTTによるNTTドコモの4.2兆円TOBが史上最大規模で他がかすんでしまうが、今年は昭和電工による日立化成のTOB(8445億円)、日立製作所による日立ハイテクTOB(4271億円)、ソニーによるソニーフィナンシャルHDのTOB(3215億円)などがこの10年間のTOB金額ベスト10にランクインしている。子会社が親会社に吸収されるというパターンが多い。子会社を吸収して来たるべきコロナ・パンデミック後の大不況に備えるという狙いのようだ。

昨年はZOZOのZホールディングス(旧ヤフー)によるTOB(4007億円)が話題になったファッション&アパレル業界だが、今年はドラッグストアのキリン堂ホールディングスの経営陣によるTOB(9月11日)、ファミリーマートのリテールインベストメント(親会社は伊藤忠商事)によるTOB(7月9日上場廃止)があった。また、2019年12月に発表されたJ.フロントリテイリングによるパルコに対するTOBが2020年2月25日にその議決権の96.43%に達したことから3月18日にパルコは上場廃止になっている。話題になったのは、ホームセンター業界第7位の島忠をめぐる同業界2位のDCMホールディングスによるTOBに割って入ったインテリア業界ナンバーワンのニトリのTOB。結局軍配はニトリにあがった。2020年はこの4件のみだが、業界再編が大テーマになっているファッション&アパレル業界では、2021年以降大型のTOBが行われるのではないかという推測がある。TOBとはまさに弱肉強食のことだが、どこがどこに食われることになるのか。行き場を失った企業の余資は、業容拡大のためのM&Aを本格化させるだろう。コロナ不況の本番は2021年だが、びっくりするような展開がありそうだ。

海外のファッション業界TOBでは、昨年合意に達していたLVMHによるティファニー買収が、コロナ・パンデミックによってLVMHが合意を撤回する方針を示し、これをティファニーが提訴。LVMHも反訴するという事態になったのが大きな話題だった。しかし、協議の結果、当初の160億ドル(約1兆6640万円*)の買収価格が当初より4億2500万ドル引き下げられて10月末に合意に達している。ダナ・キャラン社買収(2001年)では失敗したLVMHのアメリカ企業買収だが、今回はアメリカン・ラグジュアリーの最高峰の買収でどんな成果をもたらすのか大いに見ものである。

*1ドル=104円換算(12月11日時点)

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