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カリスマ創業者たちの「受難」 ZOZO前澤にサマンサ寺田、ホリエモン‥‥

Sep 19, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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ゾゾ(ZOZO)のヤフー(Yahoo!)への身売りの真相が徐々に明らかになっている。簡単に言って、「借金漬けの前澤友作・前社長(1975年11月2日生まれ43歳)が、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(1957年8月11日生まれ62歳)にSOSして、今回の身売りが決まった」ということで論調は決まったようである。

前澤氏がカリスマ創業者であることに異議はないが、ゾゾの年商はたかだか1184億円(2019年3月期決算)。営業利益は256億円で営業利益率は21.7%と高率だが、その程度の年商の企業に過ぎない。不思議なのはファッションEC分野でゾゾが独走していることだ。靴特化型の上場企業のロコンドやNTTドコモ・伊藤忠商事共同出資のマガシークなど、ゾゾの影さえ踏めない。簡単に言って、それほど日本のファッションECは遅れているのだと言っていいのではないだろうか。前澤氏の天才はその遅れを見抜いていたのであろう。しかし、このところの失策続きと現代美術蒐集や不動産投資などの「副業」がかなり忙しくなったことに加えて、「暴君」への社内から不満も高まっていたのであろう。とにかく天才創業者は退場し、ゾゾに平和が訪れると同時に、ゾゾはヤフーのファッション部門としてタダの会社になっていくことだろう。

カリスマ創業者の退場というと、平成ではライブドア創業者のホリエモンこと堀江貴文(1972年10月29日生まれ46歳)が上げられるだろう。この人物の追放劇は証券取引法違反(風説の流布、偽計取引)による懲役刑2年6カ月という実刑判決で完了した。前澤氏とはキャラクターが真逆で、「そんな質問するなんて君はもう少し勉強したら」という生意気キャラのホリエモンだが、前澤氏は今回の記者会見でも「御質問ありがとうございます」といちいち質問に応じていたのが可笑しいほどだった。この「御質問ありがとうございます」がなかったのが、「週刊新潮」記者の「2000億円は何に使ったのか?」だけだったが、ありがたくなかったのだろう。正反対の2人に共通するのは宇宙への異常な関心と、球団経営への熱望ぐらいではないだろうか。

創業者ではないが、昨年も平成を代表するカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)前日産自動車社長(1954年3月9日生まれ65歳)の解任劇も記憶に新しいところである。日産の危機を救ったカリスマ経営者であろう。カリスマゆえに「暴君」と化して自社の資産を食い荒らすようになってしまった。

どうもカリスマ経営者は生き辛い世の中になっているようである。やはり上場会社であることがカリスマたちを受難に追い込んでいるようだ。上場企業の経営者は生半可ではないモラルが求められるのだ。もちろん、犯罪に手を染めれば、生き辛いどころの話ではないが。まさか前澤前社長に違法行為があってこれから第2幕があるなんてことはないだろうと確信はしているが。

ファッション業界で今年のカリスマ創業者の退場といえば、最近紳士服チェーンのコナカと資本業務提携したサマンサタバサジャパンリミテッドの寺田和正・前社長(1965年2月12日生まれ53歳)もその1人だ。寺田氏が保有の62.6%のうち31.3%をコナカの湖中謙介社長(1960年生まれ59歳)に34億円で売却。湖中社長はその31.3%をこの9月に全てコナカへ33億円で売却し、サマンサはコナカの連結対象子会社となった。寺田和正氏はファウンダーとして同社に残る。寺田氏いわく「寺田一強体制を崩したい」と社長退任時に語っているが、これも簡単に言えば3期連続赤字の責任を取ったコナカへの身売り。カリスマ創業者の退場劇である。

カリスマ創業者は生き辛い時代と書いたが、創業者の天才的閃きだけでは、もう企業が生存することすら難しくなているということだ。とくにファッションの世界ではそう言えるだろう。それほど市場は冷え切っている。創業者は次代へ巧みなバトンタッチが求められているのだ。そうしたことを考えると、今回登場したから書くわけではないが、グループ年商9兆円を築き上げた孫正義という経営者の怪物ぶりに改めて驚かされるのである。

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