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カリスマ追放劇はなぜ起きた?前澤友作・ZOZO社長の退任とヤフーへの身売りの真相とは?

Sep 15, 2019.高村 学Tokyo, JP
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左から、川邊健太郎・ヤフー社長、澤田宏太郎・ZOZO新社長、前澤友作・ZOZO前社長

ゾゾのヤフーへの身売りは、前澤友作氏が「裸の付き合い」と強調する孫正義氏に相談として持ちかけたことがきっかけだったのだろうか?

2019年9月12日、恵比寿のウエスティンホテル東京でZOZOの緊急記者会見が開かれ、創業者で筆頭株主の前澤友作氏の社長退任が正式に発表された。さらにソフトバンク傘下のヤフーは同日、ZOZOに対してTOB(株式公開買い付け)の実施を発表、発行済み株式の50.1%を上限に買い付け子会社化する。「前」社長となった前澤氏は、ZOZO株を36.76%保有するが、TOBに応じて大半の株式を売却するとみられている。

3月15日に既報したように、昨年5月30日に関東財務局に提出された大量保有の変更報告書によると、前澤氏の保有株の87%は銀行に担保差し入れになっていた。5月23日に市場外で前澤氏がZOZOに売却したのは同社株600万株。その価格は5月22日の株式市場の終値と同じ3845円で、前澤氏が手にしたキャッシュは約230億円。ZOZOは、この約230億円を前澤氏に支払うために、短期借り入れを240億円行ったために、その自己資本比率が57.7%(2018年3月)から24.4%(2018年9月)まで下がってしまうという異常事態が生じていた。

記者会見では終始穏やかだった前澤氏だが、会見後の質疑応答で唯一ムキになって反論したのが『週刊新潮』の記者による、この“株担”に関する質問だ。「これまで金融機関に入れてきた自社株の担保が2000億円を超えるといわれている。月への旅行は100億円、バスキアは43億円くらいということで、計算が合わないのではないか。なににそんなにお金が必要だったのか」との質問に、「なんで僕が買ったものを全部言わなきゃいけないんですか。それ以外にも買っています」と語気を荒げた。ホリエモンこと堀江貴文氏でさえも「株担2000億円も入れて金を借りるなんて怖くてできない」と指摘している(『ホリエモンチャンネル』9月13日公開より)。

言ってみれば会社を「財布がわり」にしていたようなもので、ZOZOの役員たちはどう思っていたのか。そのうえ「ZOZOスーツ」や「ZOZOARIGATO」の失敗と、失策が続くなかでも女優・剛力彩芽との浮名や宇宙旅行といったZOZOの事業とは関係のない話題でワイドショーを賑わせ、前澤氏にほとほと愛想を尽かしていた幹部がZOZO社内にいたとしてもなんら不思議はない。12日の記者会見で前澤氏を「ワンマン経営者」と断じたZOZOの澤田宏太郎・新社長もそのひとりであろう。そこにEC事業においては国内万年3位のヤフーだ。2018年6月に社長に就任した川邊健太郎氏は、「1位しか許さない」孫正義氏から相当なプレッシャーをかけられていたという。今回の買収劇は、企業統治が完全に麻痺する前にZOZOの善良な幹部が、「1位しか許されない」川邊社長のアシストを得て、「ワンマン経営者」に引導を渡した追放劇だった可能性はなかろうか。「裸の付き合い」などという呑気な話ではない。

借金のせいで首が回らなくなって会社を放り出したただの辞任劇なのか、あるいはグループ8兆円企業が1300億円のワンマン企業を飲み込んだだけの買収劇なのか、それともこうしたカリスマ経営者の追放劇なのか、真相はいずれ明らかになるだろう。どちらにせよ、得をしたのはヤフーと前澤前社長だけであり、なにも知らされぬままただ置き去りにされたZOZOの社員はこの状況をどう思っているのだろうか。

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