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買収下手なセブン&アイHDが買収企業の後始末を急ぐ理由

Feb 1, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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PHOTO:SEVENTIE TWO

セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、傘下の百貨店事業であるそごう・西武を売却する方針で最終調整に入った。投資ファンドや事業会社が候補で売却価格は2000億円程度だという。セブン&アイHDの大株主である海外ファンドからそごう・西武や総合スーパーのイトーヨーカ堂などを切り離して、主力のセブン-イレブン事業への集中を求めて圧力をかけたのがその原因だ。株主、それも日本のかつての百貨店神話なんて知らない海外ファンドは、なんでこんなものが傘下にあるのか、理解不能なのだろう。売却先は2月中には判明するという。

セブン&アイHDがミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を買収したのは2006年。リーマン・ショック(2008年9月15日)の2年前で、総合小売業を目指すセブン&アイHDにとっては、百貨店のプレステージ性が欲しかったのだろうが、もしリーマン・ショック後であったら、まずあり得ない買収だったろう。要するに、セブン&アイHDにとっては失敗した買収だったのだ。当時30店あったそごう・西武の店舗は、現在はその3分の1の10店舗になった。その現在の10店舗は以下の通り。

①西武池袋本店 ②西武渋谷店 ③西武所沢S.C ④西武東戸塚S.C ⑤西武福井店 ⑥西武秋田店 ⑦そごう横浜店 ⑧そごう千葉店 ⑨そごう広島店 ⑩そごう大宮店

この10店舗でコロナ禍以前に確実に黒字だったのは、巨大旗艦店である①⑦の他では、地域一番店である⑧⑨の4店。⑩は大宮で、高島屋と東西に分かれて競っているが、黒字かどうかは微妙なところだろう。

そごう・西武は2021年2月期で4251億円の売上高で最終損益は172億円の赤字だった。上述したコロナ禍後に黒字が期待できる4店に絞れば、コロナ禍後でもなんとかやっていけそうだが、この15年で30店舗を10店舗にして、「もう店舗スクラップは勘弁です」ということなのだろうか。

セブン&アイHDは、昨年7月には保有するフランフラン社の株式の25%を売却した。売却後の保有株比率は23.5%になった。これも、インテリア雑貨との取り組み強化ということで、2013年に資本業務提携を行ったが、成果を出せずに売却に至っている。数10億円の取引だったと推測される。

加えて、この後セブン&アイHDは、2013年12月には、バーニーズジャパンの株式を東京海上キャピタルが運営するファンドからその49.9%、2015年2月には住友商事からその51.1%の株式をそれぞれ取得して完全子会社化している。買収金額は約120億円。2016年9月16日には六本木店(約1900㎡)を新たにオープンしたが、売り上げは伸びずに「お荷物店舗」になっている。さらに日本第1号店であった新宿店を2021年2月28日にクローズすることになった。やはり、「バーニーズ」という「セレクトショップの名門」というプレステージに惹かれた買収だったが、小売には全く適さない六本木に大型店舗をオープンするなど、「ファッション小売が分かっているのか?」という業界人からの失笑を浴びてきた。恐らく早晩、このバーニーズジャパンも後始末の対象になるだろう。

こうした一連のそごう・西武、フランフラン、バーニーズジャパンなどの買収の失敗を見ていると、「餅は餅屋、コンビニ屋はコンビニ屋」というか、多角化の難しさを露呈する好例になってしまった。もちろん年商8兆7000億円(2022年2月期連結営業収益予想)、営業利益4000億円(2022年2月期予想)のコンビニ帝国にとっては、小さな傷であろう。コロナ禍の影響もあっという間に跳ね飛ばして今年2月末決算は史上最高決算が予想される。昨年2月通期決算では、売上高5兆7667億円中、海外コンビニ(セブン-イレブン)は2兆1913億円、国内コンビニ(セブン-イレブン)は9208億円、スーパー(イトーヨーカ堂)は1兆8108億円、百貨店(そごう・西武)は4251億円という構成だった。

セブン&アイHDは、昨年7月に米国のガソリンスタンド併設型コンビニチェーン「スピードウェイ」の210億ドル(約2兆3300億円)の買収を完了している。「スピードウェイ」は全米第3位のコンビニチェーンで3854店舗を持つ。全米第1位の米国セブンイレブンが9519店舗で、買収後にシェア8.5%の圧倒的業界トップになって、この買収は日本のセブン&アイHDの今年2月決算にも即反映される。百貨店やインテリア雑貨ショップ、セレクトショップなどのチマチマした多角化をやっている場合ではなくなったのだ。今後は、大株主の要求通り、経営資源を国内外、とくに海外のコンビニ事業に集中することになりそうだ。

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