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ラピーヌ実効支配のフリージア・マクロスが東京ソワールも乗っ取りか!?

Jun 11, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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東京ソワール本社が入居する南青山の新青山ビル

婦人フォーマルのナンバーワン企業である東京ソワール(東証2部上場)の株価が5月下旬から急騰している。コロナ禍もあって同社の業績は低迷している。2019年12月期、2020年12月期とも減収で利益はすべての段階で赤字。2021年12月期もおそらく同様で3期連続の減収赤字は確定的だ。しかし株価は5月20日(終値546円)から終値ベースで6月4日までに12営業日連騰している。その後も6月8日には300円高のストップ高で終了し、終値は1497円。5月20日から実に株価は2.74倍になっている。その原因になっているのは、フリージア・マクロス(東証2部上場の産業用機器製造業者)が6月3日に財務省に提出した東京ソワール株の大量保有報告書だ。

フリージア・マクロス社は同日5.95%の東京ソワール株を保有していると報告(報告義務発生日5月27日)。さらにその10分後にはフリージア・マクロスは東京ソワール保有比率が5.95%から7.75%に増加したと報告(報告義務発生日6月1日)している。

6月10日15時8分には7.75%→10.27%(報告義務発生日6月3日)と報告、さらに6月10日15時19分には10.27%→11.76%(同6月8日)と報告するなど急ピッチで買い上がっている。

このフリージア・マクロスは、経営難の企業の再生引受人として、シゲムラ建設(地盤改良工事業)、飛松建設(総合建設業)、マツヤハウジング(マンションディベロッパー)、夢みつけ隊プレミアム・ウェディング・バンク(ゲストハウス結婚式場)、安藤鉄工建設(大手鉄工所)、ガーストカルデア(総合建設業)、ピコイゴン(断熱設備工事)、装道礼法きもの学院などを今まで手がけている。

最近フリージア・マクロスが注力しているのがアパレル分野である。ツカモトコーポレーション(東証1部上場)の総株式の7.18%保有(2020年12月に従来の6.13%保有から増加)が注目されているが、本腰を入れたのがラピーヌ(東証2部上場)だ。発行済み総株数の36.72%を現在取得しているが、51%を取得しないでもすでに「実効支配」は完了している。代表取締会長を経て今年1月25日に代表取締役社長に就任したのはフリージア・マクロスグループの総帥である佐々木ベジ氏(1955年9月26日生まれ65歳)である。佐々木ベジ氏以外にも、佐藤生空氏、羽沢一也氏、奥山一寸法師氏(佐々木ベジ氏の実弟でフリージア・マクロス代表取締役社長)の3人がラピーヌの9人の取締役に名を連ねている。

3月5日には、従来の大阪市中央区大手前1丁目7番31号にあったラピーヌ本社が、フリージア・マクロスの本社があるビル(東京都千代田区神田東松下町17番地)に移転している。

そして、フリージア・マクロスが次なるターゲットにしたのが今回の東京ソワールである。ツカモトコーポレーション、ラピーヌに共通するのは、ファッション&アパレル分野でも、きもの(ツカモトコーポレーションの子会社にかつてのきもの取扱高日本一企業の市田を吸収したツカモト市田がある)、プレタポルテ(婦人既製服)や婦人フォーマルという「固い」企業をターゲットにしている点だ。ファッションの世界ではどんどんカジュアル化が進行していてある意味では時代遅れになっているきもの、プレタポルテやフォーマルになぜフリージア・マクロス=佐々木ベジ氏は注目したのか。逆に言えば、こうした分野は縮小しても必ず残っていくと言う「読み」があるのではないだろうか。いずれにしても、佐々木ベジ氏は流行、トレンド、ストリートなどには一切興味がないようだ。ただし救われるのは、佐々木氏がいわゆる経営危機の上場会社を買収してそれを切り売りする「整理屋」ではなく、信念のある経営者のようである点だ。

佐々木ベジ氏の名を一躍世に知らしめたのは2017年5月のソレキア(ジャスダック上場の独立系電子部品商社)の富士通とのTOB(株式公開買い付け)合戦で、取引先のソレキアを助けに入った富士通に完勝したこと。富士通の戦略ミスもあったが、台湾の投資家をバックにして、フリージア・マクロスは一気に経営再建の買収スターにのし上がった。正直、ラピーヌにしても東京ソワールにしても、従来型の経営者では経営再建は縮小均衡が続くだけで難しいと思う。ラピーヌと東京ソワールの合併とか業界の人間には思いもつかない起死回生策が飛び出すのではないか。最近では経営不振の企業をせっせと買収して失敗したRIZAPグループのような例もあるが、佐々木ベジ氏はそんなに甘い経営者ではなさそうだ。とりあえず、渦中の東京ソワールの動向が気になるところだ。ラピーヌ並みにとりあえず発行済み総株数の34%を取得するのではないかとみられている。それまで東京ソワール株の高騰は続いていくのではないかという投資家の買いが買いを呼ぶような展開になっているが、どう進んでいくのか興味深い。

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