昨年10月1日からの消費増税、暖冬に加えて新型コロナウィルスの脅威が日本のファッション&アパレル市場を直撃している。東京2020五輪イヤーに期待していた小売業界だが、サンタンたる幕開けに凍り付いている。特に小売りの中でも嗜好性の強いファッション&アパレル市場は影響が大きい。
その中でも、もう毎年同じ繰り返しになっている「暖冬」については、抜本的な改善策が昔から言われているが、紹介しておく。それは、今の小売スケジュールの徹底した見直しである。例えば防寒衣料は最高気温が10℃を下回ったら大きく動き始めると言われているが、現状でのピークは11月、12月で1月に入ればすぐにバーゲンになって、2月に入れば春物の店頭展開が始まっている。これは、今の気候とはあまりにもかけ離れてはいないか。2月が寒さのピークなのは毎年同じなのだから、1月のバーゲンというのは、あまりにも理不尽でもったいないのではないだろうか。1月、2月には「定価」で防寒衣料が十分に売れると思っている小売関係者は多いはずだ。しかし、周囲がバーゲンに血道を上げている中で、定価販売をする訳にもいかない。本当に誰が始めたことなのか、1月2日初売り、これが済んだらバーゲンになだれ込んで在庫を一掃しようという「天下の悪習」を。
5年ほど前に新宿地区で伊勢丹新宿店とルミネが共同でバーゲンの後倒しに挑戦したことがあったが、いつの間にかその挑戦は跡形もなくなってしまった。たかだかバーゲンの後ろ倒しすらできないのである。それほど現在行われている「天下の悪習」は強烈な存在なのだろう。恐るべしである。しかし天候をつぶさに調べてみれば、決して防寒衣料が全くダメなほど高温の日が11月〜2月の4カ月間で支配的だったわけではなく、店頭のコートに思わず手を伸ばして買ってしまうような寒い日が少なからず1月、2月にはあるのである。
今のファッション&アパレル業界の商品販売スケジュールは間違っている。あまりにも商品提案が先走り過ぎている。じっくり適時適品を売っていないのである。これは冬物に関してばかりではない。夏物に関しても同様なことが言える。
ただし「天下の悪習」であっても勇気のある1、2社が改善に動いたとしてもどうにもならないものであることも確かなのである。ただ、そうした良識を持つ業界人が一人でも増えて、ある時に結集して「天下の悪習」を払拭してもらいたいと願うだけである。