ZOZOのブランドソリューション本部の風間昭男本部長
ECプラットフォームが実店舗の売上を支援するというケースはこれまであまり馴染みがないが、どういった思いでこのプラットフォームを立ち上げたのだろうか。風間氏は、「元々は新型コロナウイルスの影響が大きかったです。コロナの影響を受けるアパレルの店舗が続出し、ファッション業界全体が影響を受けました。ZOZOとしてなにか貢献したいという思いがありました。一方で、ZOZOとして業界全体にどういったことができるかということを、2019年ごろから社長の澤田たちと議論してきました。これまで『ファッションを買うならZOZO』として突き進んできましたが、買うという概念を広げて、『ファッションのことならZOZO』という方向へシフトしようとなり、この2つの思いがあってゾゾモを立ち上げることになりました」と、立ち上げに至るまでの経緯を語る。ZOZOはユーザーとブランドのことを考えながらものごとを組み立てている企業だが、それが結実したようなサービスと言える。
「ゾゾタウン」はブランド横断のECサイトだが、これまでも「ゾゾタウン」でチェックしたユーザーが、実店舗で画面を見せて商品を購入するという流れがあった。「それであればネットとリアルをさらに強固に繋いでいくことで、実店舗でもECサイトでもどちらでも楽しめる機会が増える」と、風間氏は考えた。「ただ、それをZOZOのような広さでやれている企業はありません。我々は商品の取り置きやコーディネートの投稿など、点のサービスを提供しているのではなく、オンラインとオフラインをうまく繋げていき、圧倒的なトラフィックを駆使しながら、面のサービスとして提供していきます。ですから、例えばユーザーがゾゾタウンで商品を見て実店舗に行き、またゾゾタウンに戻ってきてコーディネートをチェックする、さらにそのユーザーが実店舗に戻って、今度はショップスタッフさんのファンになって、お気に入りのスタッフのコーディネートをチェックするような、そういった大きな流れを作っています。そのためには、在庫がどこにあっても販売ができるように在庫連動は必要ですし、実店舗の価値を最大化させることも必要です。ゾゾモはそのために必要なものを全て備えているわけです」。
ブランド企業側がもうひとつ期待を寄せているのが、ショップスタッフのモチベーションアップに繋がる仕組みだ。専用ツール「ファーンズ」を通してショップスタッフの負担を軽減する仕組みを提供している。取り置きなどがオンライン上で簡単にでき、煩雑な在庫管理も手早く作業できる。さらに、コーディネートアプリの「ウェア(WEAR)」とも連動し、自身のコーディネートをゾゾタウンにも「ウェア」にも同時に投稿ができるようになる予定だ。投稿したコーディネート経由で、送客数やEC売上、売上ランキングなどの成果が確認できるようになるため、テスト段階で参加しているショップスタッフたちからはすでにポジティブな反応をもらっているという。「膨大なトラフィックの中であれば、ウェアやゾゾタウン上でのコーディネート投稿を通じてファンがつくようなショップスタッフさんが出てくるかもしれません。今後もショップスタッフさんたちのモチベーションアップに繋がることを愚直にやっていきたいと思います」と、風間氏は話す。
OMOは、ネットとリアルが融合する世界だ。一方で、ブランドにとっては経営課題になっているものの、OMOへ対応ができていないケースも多いのが実情だ。「ZOZOがそういったところを支えることでファッション業界全体のプラットフォームになれると思いますし、できるだけ近い未来に実現したいと考えています」と、風間氏はZOZOの将来を見据えながら語る。「ゾゾモ」はファッション業界との絆をさらに深めていくプラットフォームとなっていくのか、今後も注目したい。
ショップスタッフの販売サポートツール「ファーンズ」