資生堂は、中国生活者に向けて「日本の美」を発信するプラットフォーム「观美日本(グアンメイリーベン/GUAN MEI RI BEN)」を開設したと発表した。
8月14日から本格始動している本プラットフォームは、資生堂が星野リゾートをはじめ、航空、観光、小売業界における複数のパートナー企業、そして日本政府観光局(JNTO)との協働事業。中国における月間アクティブユーザーが約13億人のインスタントメッセンジャーアプリ「WeChat」内のコンテンツ、「WeChatミニプログラム」で運用される。
日本のあらゆるものの「美しさ」を発見できるプラットフォームとして、全国の知られざる「通」な場所、行ったことがあるのに知らなかった場所・モノ、日本ならではのサステナビリティなどをカテゴリー別に紹介する。カテゴリーは「感、顔、食、景、物」の5つ。日本特有の文化・おもてなしの体験やコミュニケーションを通じた人とのふれあい(感)や日本特有の美容習慣や最新技術によって生まれた化粧品やサービス(顔)。さらに、日本特有の調理法で四季の素材を味わえる食事処(食)や日本特有の風土や景色を楽しめる場所(景)、細部にこだわったメイドインジャパンの商品(物)。このように日本特有の文化を五感で体験できる内容となっている。
資生堂は本取り組みの背景に、コロナ禍を経て、行動制限が緩和された現在、中国人生活者の海外旅行への意欲が高まっていることや、訪日旅行への目的として日本特有の文化やサービスの体験を重視する傾向が高まったことを理由に挙げている。そこで、中国人生活者の日本への観光や商品、サービスの体験に対する興味を再熱させ、プラットフォーム「观美日本」を通じて、インバウンド需要の再活性化および日本経済の活性化への貢献を目指すという。
8月10日、約3年半ぶりに中国人の日本への団体旅行が解禁されたことで、今後、訪日中国人旅行者数は大幅に増えるとみられる。しかし、団体旅行の解禁でインバウンド需要が期待される一方で、いくつかの課題も生じる。観光業の人手不足や、観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せてしまうオーバーツーリズムの問題だ。特に宿泊業界や飲食業界が深刻で、キャパシティーが不足し宿泊を断った際に、サービス不備により日本の観光に対する評判が落ちてしまう可能性が考えられる。また、オーバーツーリズムを放置してしまうと、交通渋滞やトイレ不足といったインフラの問題、騒音やゴミの問題などと、それらを原因とした地域住民と旅行者のトラブルにもつながりかねない。それらを踏まえて、業界を横断して企業・組織が連携する「观美日本」ではどのような効果が生まれるのか。今後の動向に注目したい。