年末恒例になった「『現代用語の基礎知識』が選ぶ2021年ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30が11月4日に発表になった。当然のことながらコロナ関連(「自宅療養」「人流」「副反応」「黙食/マスク会食」「変異株」「路上飲み」)が6つ選ばれている。さらにオリ・パラ強行開催の政府への忖度ではないかと思えるほどオリ・パラ関連(「エベジーーン」「カエル愛」「ゴン攻め/ビッタビタ」「13歳、真夏の大冒険」「スギムライジング」「チキータ」「チャタンヤラクーサンクー」「ピクトグラム」「ぼったくり男爵」)は9つも選ばれている。さらに2021年最大のヒーロー大谷翔平関連は「ショータイム」「リアル二刀流」と2つも選ばれている。これですでに17個である。
また、格差拡大で社会の不平等に関する不満を表した言葉が目立ってきているのも今年の特徴だろう。「うっせぇわ」「親ガチャ」「ヤングケアラー」の3つが選ばれている。
さて、こうした中でファッション&アパレル&ライフスタイル関連の流行語では、「SDG's」「NFT」「ジェンダー平等」「Z世代」「フェムテック」の5つが上がっている。最近はいわゆるトレンドやアイテムなどファッション関連の言葉が流行語になることもほとんどなくなっているが、この5つの言葉は、今年企画書や記事や批評にかなり登場した言葉だった。「サステナブル」「エコ」「エシカル」という言葉に代わって、今年SDG’sが登場した。2015年に国連がすべての加盟国の合意で採択した「持続可能な17の開発目標」のことで2030年までに達成すべきだとしている。その17の目標のひとつである「ジェンダー平等」もノミネート30の中にリストアップされている。「ボクたちだってスカート履きたい!」というのがファッションの世界では「ジェンダーフリー」の端的な表現であろう。
「Z世代」というのも今更の感はあるが取り上げられている。1995年から2005年あたりに生まれた男女のことだが、この世代の攻略がなかなか進まないのが、旧来型アパレルメーカーの衰退の原因になっているようだ。この2021年流行語大賞ノミネート30にはとり上げられなかったが「D2C」(Direct to Consumer)ブランドに月商1億円を軽く超えるようなブランドが誕生している。化粧品では言うまでもなく、アパレルの世界でも「ファブリック トウキョウ」「アメリ ヴィンテージ」「コヒン」などが台頭している。こうした流れに乗っていこうと、「チューズベース シブヤ」(そごう西武)や「明日見世」(大丸松坂屋)などD2Cブランドにショールームを提供する百貨店が今年後半には現れている。
「NFT」は非代替性トークンのことだが、ファッション業界では「アンリアレイジ(ANREALAGE)」がアニメ『竜とそばかすの姫』とコラボレーションし発表した2022年春夏パリコレクション(動画)のNFT作品11点が、日本初のNFT美術館「NFT鳴門美術館』によって5000万円で購入された。日本のファッション業界で一早くNFTがビジネスになった例だが、今後もこうした例は続いていきそうだ。リアルな商品でなくとも購入者を満足させる唯一性のあるNFT商品にファッションの未来はあるかもしれない。
そして、今回の流行語大賞ノミネート30語の中でファッション&アパレル&ライフスタイル分野において今後最大のビジネスになりそうなのが「フェムテック」である。女性(フィメール)と技術(テクノロジー)を合成した言葉で、女性の抱える心身の健康問題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことだ。2025年には5.3兆円の市場になると予想されている。すでに吸水型サニタリーショーツが大きな市場を形成しているが、今後ウェアラブル搾乳機、膣トレーニンググッズ、生理や排卵日の予測アプリ、妊活用アプリ、産婦人科向けオンライン診療システムなどの本格化が期待されている。
ファッションでは、「D2C」「NFT」「フェムテック」が2021年の流行語ベスト3と言えそうだ。