長からず短からずのややクロップド丈のパンツ、太からず細からずのパンツのわたり幅。そんな誰にも似合いそうで、かつ新鮮なボトムスに合わされたのは、ウィメンズではおなじみの、そしてメンズでは使われたことのない「ファンシーツイード」のジャケットである。メンズのツイードと言えば従来は英国調。しかし、ネップヤーンのツイード地のジャケットが、これほどメンズに似合うとは!
またビジュー刺繍を散りばめたポロシャツやニットアンサンブルの美しさはどうだ!?
フェミニンとマスキュリンを合体させるやり方は、最近のキム・ジョーンズが得意とするところ。「フェンディ(FENDI)」のウィメンズでも見られるが、この「ディオール メン」はその「ナチュラルさ、違和感のなさ」において、まさに衝撃的なのである。
言ってみれば、かつてジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)がそれまでは女性服にしか使用されていなかったウールジョーゼットをメンズジャケットにさらりと使用した、という史実と同じくらい革新的だ。
キムは語る。「過去のウィメンズウエアから受け継ぎ、現代のメンズウエアへと落とし込むこと、これは一つのカルチャーです」。そしてムッシュ ディオール、イヴ・サンローラン(Yves Saint-Laurent)、マルク・ボアン(Marc Bohan)など歴代のクリエイティブ・ディレクターからのインスピレーションをもとに、自身のスタイルを融合し「Homme Fleur(フラワー マン)」の庭園=今回のコレクションが形作られたのだと続ける。
そう、彼がこのメゾンに来て今年で5年目。優れたアーカイブに囲まれた5年間はどれほど有意義であったことだろう。フェミニンなのにマスキュリン、サロンなのにストリート、そしてニュールックなのにニューウェーブ!トラぺーズ(台形)ラインのコートも、カナージュ(籐椅子の織り柄を模した幾何学模様)柄のニットも、得意のハカマ風プリーツボトムスもすぐにでも着てみたい!