柳川荒士(やながわあらし、1975年3月17日生まれ48歳)によるブランド「ジョン ローレンス サリヴァン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」が設立されたのは2003年というから今年が丁度20周年になる。販売店のリストを見てみたらかなりの数に上り、しかもいわゆる一流店での販売が多い。ブランド設立5年後の2008年には中目黒に旗艦店をオープンし現在に至っている。同ブランドのサイトによると海外にも60以上取扱店舗があるという。
2007年春夏シーズンから東京コレクションにもデビューして2010年まで参加。2010年春夏シーズンからはウィメンズコレクションも発表している。パリコレ、ロンドンコレクションにも参加している。いわゆる東京コレクション参加のブランドとしては成功している数少ないデザイナーと言うことができるだろう。東京コレクション参加当時はそのコレクションを私も見たが、たしかに「屈強なエレガンス」と同ブランドホームページが表現しているような強烈な印象があって今も記憶に残っている。
しかし「どうも海外の有名ブランドのイイトコどりの匂いがする」と私がその頃所属していたWWDジャパン(現WWD JAPAN)で書いたところ、「柳川さんが三浦さんのことを『この人分かってないなあ』と言っているそうですよ」と編集部の人間から言われたことがある。結構批評を気にする人のようであった。編集部の人間は暗に、「柳川さんはプロボクサー出身ですから注意した方がいいですよ」と言っているようでもあった。
柳川荒士は本名なのかどうか、名前もコワいし、広島の出身だという。広島出身のファッションデザイナーというとなんといっても2022年に亡くなった巨匠三宅一生だが、この巨匠は激情家として知られていた。気に入らない記事を書いた業界紙記者を呼びつけて、最初は静かに話していたが、いつの間にか興奮して来て、机を激しく叩いていたとその記者から聞いたことがある。
今回柳川荒士はTV(5月4日放送のテレビ朝日『テレビ千鳥』)でお笑いコンビの「千鳥」の大悟がセレクトショップ「ステュディオス(STUDIOS)」において試着した「ジョン ローレンス サリヴァン」の服を「正面チャック2枚ち◯ぽ出し変質者」とギャグをかましたことに憤慨した投稿をInstagramにアップした(既報)。
たった2人のデザイナーの例で判断するのもどうかとは思うが、広島出身のデザイナーは他人の目を気にする激情家というパターンがあるのだろうか。
世界の三宅一生が、たかが業界紙の記者の批評を気にして呼び出して説教というのもおとなげない。柳川荒士が自分のデザインをお笑いのネタにされて憤慨しInstagramで批判というのもとても成功者がするようなことではないと思うがいかがだろう。いずれも笑って済ませるか、せいぜい舌打ちするぐらいのことではないのか。
そう言えば、あるデザイナーのコレクションを、「ルパン三世の峰不二子みたいなファッション」と書いたら、それを読んだそのデザイナーが編集部にすっ飛んで来て、「あなたはそもそもミシン踏んで洋服が作れないじゃないか」と暴言を吐いたのを思い出す。「残念ながら洋服は作れません。でも、あなたは私みたいに文章が書けるんですか」と言い返したら、そそくさと帰って行った。そのデザイナーはその後どうなったのだろう。デザイナーの皆様、口は災いのもとですぞ。