
なにかと話題が多いオイシックス・ラ・大地。オイシックスはいま、利益を最短距離で取りに行く局面ではない。信用と信頼を、事業領域ごとに積み上げに行くフェーズにある。「伊勢丹」と「給食」は離れて見えるが、実は同じ方向を向いているんだ。
直近2025年3月期決算の数字は、連結売上高は2560億円(前期比72.5%増)、営業利益68.5億円(前期比33.9%増)。一方、当期純利益は36.3億円で11.4%減となった。売上は大きく伸び、利益はまだ追いつかない状態にある。BtoCサブスク売上は、971億円で2%減。BtoBサブスク売上は、607億円で306%増。家庭向けは横ばい、給食を含む法人向けが一気に拡大している。
2024年1月、オイシックスはシダックスを子会社化した。統合前のシダックスは売上規模で約1300億円。学校、病院、保育園、高齢者施設、社員食堂を支える給食事業が中核だ。給食は人件費と原材料費でコストの大半が決まる。売上は出るが、利益は出にくい。だからこそ売上は一気に跳ねるが、利益はゆっくり追いつき、評価はさらに遅れるということになるんだ。この時間差が今回の決算には、はっきり表れている。
オイシックスのEC基盤と物流・定期宅配の仕組みを活用し、伊勢丹が編集・運営する食品宅配サービス「ISETAN DOOR」は、単体売上は非開示だが、決算数字から逆算すると年商100億円程度と見るのが自然だ。商品構成を見ると、伊勢丹店頭より一段下の価格帯が中心。高級感は残すが、毎週は買えない価格にはしない。定期宅配で失敗せずリピートできる。この価格設計こそが、長年の運用ノウハウと見たよ。
以前オイシックスのマーケに関わる人と話をしたことがある。AIで「食材を個人に最適化してリコメンドする」のは、現実にはかなり難しいと。理由は単純だ。「家族構成が変わる」「体調が変わる」「曜日ごとに環境が変わる」 同じ人でも、毎週条件が違うからね。だから有効なのは、考えなくても成立する定期宅配。生活リズムへの同調だ。参入障壁は技術ではなく、生活に入り込むまでの時間だ。
給食事業は儲かりにくい。だが最近のIRでは、契約施設数の拡大とBtoB売上の積み上げを明確に掲げ、給食を中長期の成長前提で扱っている。2025年3月期のBtoBサブスク売上は607億円。2030年3月期には、BtoCとBtoB合算で売上3000億円を掲げる。BtoBは契約施設数3,000施設規模まで拡大させる計画だ。家庭の食卓で信頼を積み、百貨店で品質を証明し、給食で社会的な認証を得る。
給食の収益改善は時間がかかる。いまは期待が先行する局面だ。巳之助の適正購買レンジは1,400円から1,600円。数字が積み上がるのを待ちながら拾いたい。昼は「給食」、夜は「イセタン」を食べて育つ子どもが、そのうち出てくる時代が来ると。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。












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