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パリ・サンジェルマンが来日 中東資本によってマネーゲームと化した欧州サッカー

Jul 27, 2023.田村太陽tokyo,jp
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パリ・サンジェルマンInstagramから

ネイマール(Neymar da Silva Santos Júnior)、キリアン・ムバッペ(Kylian Mbappé Lottin)といった世界的なスター選手を擁するフランスのサッカークラブ、パリ・サンジェルマン(PSG)がプレシーズンのジャパンツアーで来日中だ。

パリ・サンジェルマンは、このジャパンツアーに合わせ、大阪中之島美術館で7月30日までの期間限定でポップアップストア「PSGハウス」をオープンした。「PSGハウス」では、日本を代表する建築家の隈研吾や世界のストリートカルチャーを牽引するグラフィックアーティストのヴェルディ(Verdy)らとコラボしたアイテムがラインアップ。チームカラーのレッドとブルーを基調に作られた空間はパリ・サンジェルマンのファンには堪らないものだろう。

ポップアップ初日にはネイマールらパリ・サンジェルマンの選手たちが参加するなどし、大きな注目を集めた「PSGハウス」はジャパンツアーのプロモーションとしては成功していると言える。しかし、肝心の試合を観ると「世界最高のクラブ」として名高いパリ・サンジェルマンの厳しい実情が見えてくる。

7月25日に大阪のヤンマースタジアムで行われた、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo dos Santos Aveiro)擁するアル・ナスルとの一戦では、チケットが2万円〜50万円と高額であり、テレビ放送でも空席が目立っていた。最大で5万人収容できるヤンマースタジアムであるが、発表された来場客数は約2万5000人と世界最高のクラブの試合としては、物寂しく感じる数字だ。契約上の問題があり、エースのキリアン・ムバッペはジャパンツアーに帯同せず、ネイマールが怪我で欠場した今回のゲームは0-0のスコアレスドローに終わり、期待はずれの塩試合と言えるものであった。

なぜ、ネイマール、クリスティアーノ・ロナウドといった時代を象徴する名手たちによる試合が塩試合となってしまったのだろうか。その背景には、近年欧州サッカー市場を騒がせている中東資本がある。

2011年にカタール投資庁の子会社であるカタール・スポーツ・インベストメント(Qatar Sports Investment)に買収されたことによって、欧州屈指の資金力を持つクラブとなったパリ・サンジェルマンは、2017年にスペインのFCバルセロナから約290億円でネイマールを獲得したことで、一躍有名なクラブとなった。この移籍金は当時の史上最高額であった137億円を上回るものであり、近年の欧州サッカー市場を象徴するものである。

今回、ジャパンツアーで対戦相手となったアル・ナスルは、今夏の移籍市場で最も注目されているサウジ・プロフェッショナルリーグに所属するクラブである。サウジアラビア王室が経営に関わる同クラブが昨年末、クリスティアーノ・ロナウドを約280億円で獲得したことを皮切りに、欧州からサウジアラビアへと移籍する選手が急増した。同国は、2030年のFIFAワールドカップ開催を目指しており、こうした移籍市場の動きは国家戦略の一つであると考えられる。

2000年代には、移籍市場の高騰によって財政収支が逼迫し、イタリアのフィオレンティーナやスコットランドのレンジャーズといった名門クラブが経営破綻を起こした。こうした欧州サッカーのバブル崩壊を防ぐため、欧州サッカー連盟は2014年から各クラブに財政収支のバランスを求めるファイナンシャル・フェア・プレー規則を課しており、パリ・サンジェルマンなど多くのビッグクラブがこれに違反し、罰金を命じられている。

中東資本の登場によって、世界経済に反して高騰するサッカー市場は今回のジャパンツアーでの試合が物語っている。チケットが高額なために、熱心なサッカーファンがスタジアムに集まらず、盛り上がりの欠ける試合となってしまった。移籍金の高騰からはじまり、チケットや放映権の値上げによって、試合の観戦すら経済的に厳しい人々が増えているという不健全な状況が改善されることを願うばかりだ。

 

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