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パルグループHDの「広告」より「中の人」が利益を生む仕組み【いづも巳之助の一株コラム】

NEWOct 14, 2025.いづも巳之助Tokyo,JP
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「パルクロミューズ」に就任した川栄李奈

おや?広告をほとんど打たないのに、売上高は過去最高。パルグループホールディングスの2026年2月期上期決算を読むと、見えてくるのは人が広告を代替する会社だ。社員がインフルエンサーとしてブランドを動かし、働き方そのものが利益を生む。つまり、パルグループHDは「スタッフ自体がメディア」になっている。

■数字の裏側
上期の売上高は1170億8,200万円(+15.6%)、営業利益140億9500万円(+19.4%)と絶好調。広告宣伝費は売上比でわずか1%台前半。にもかかわらず、粗利率は57.1%(+1.1pt)。理由は明快だ。社員が「SNS手当」という形で販促費を担っている。フォロワー数に応じて報酬が支払われ、スタッフが自らのアカウントで商品を発信。フォロワーは全社で285万人、前年より43万人増えた。

SNSで話題が生まれるたびに、予約と正価販売が増え、在庫が減る。広告を減らした分、社員の発信が増えた──それが今のパルグループHDの利益構造である。

■広告をやらない会社ではなく、広告を中で作る会社
実際、パルグループHDは広告をやめたわけではない。やっているのは「中の人」による広告だ。テレビCMも交通広告もなく、代わりに社員のSNS、PAL CLOSETアプリ、プッシュ通知が宣伝の主役。

しかも、広報・EC・CRMをひとつのチームに統合し、全データを自社で管理。外部の代理店に依存しないため、販促効果を即座に検証できる。この「内製型メディア経営」が、低コストで持続的なブランド発信を可能にしている。

■働き方が価値を生む仕組み
社員1900人がSNSで発信する「社内インフルエンサー制度」は、単なるPRではない。フォロワーが増えるほど収入も増える成果連動型。つまり「働き方=ブランド価値」という新しい人材モデルだ。アパレル企業の多くが労働集約型のまま苦しむ中、パルグループHDは発信集約型に変わった。「働き方改革」がそのまま「広告効率改革」になっているんだ。

■数字の裏で回るもう一つの仕組み
もう一つの柱が「4週間MD」。在庫を1カ月単位で売り切る仕組みで、欠品を恐れず発注を絞る。SNSで予約販売を受けながら需要を読み、追加生産を最適化。廃棄率は5%未満に抑えられ、粗利率57%台という驚異的な水準を維持している。広告を減らし、在庫も減らし、人の発信を増やす。無駄を極限まで削り、仕組み全体が利益を生む体質に変わった。

■比較の視点
アダストリアやワールドが販促費率3〜4%、広告依存型であるのに対し、パルグループHDはその3分の1のコストで同等以上の売上成長。社員発信による広告効果は、リーチ単価換算で年間30億円規模に達する。つまり、広告を外に出す会社から、中で生み出す会社に変わったのだ。

■投資判断/巳之助の見立て
パルの成長は「外部景気」ではなく「内部構造」に支えられている。スタッフが発信を続ける限り、業績のベースラインは下がらない。これが、パルグループHDにおける「一段高」の常態だ。

現状株価は2,200円前後、PER15倍台。適正購入レンジは2,000円を目安。2026年以降の予想EPSを考慮すれば、目標株価は2,600〜2,800円台。海外「スリーコインズ(3COINS)」の拡大やアプリ会員1400万人達成が見えれば、3,000円台回復も射程圏内だ。パルグループHDは、働き方を企業価値に変える、新しいSPAの形を示した。

巳之助は「社員インフルエンサー経営」と「海外スリコ拡大」のどちらを先に見るかで少し考えるけど.....。長期で見れば両輪で成長する構造に変わりはない。

プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

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