ただ、これは驚くことではない。巳之助が3年前に2人のアナリストから「髙島屋は典型的な狙われやすい企業」と聞かされていたからだ。含み益は大きく、PBRは割れたまま、役員は硬直的。条件は、当時から揃っていたんだ。
▷狙われやすい企業の5つの傾向
①PBR1倍割れ。株価が会社の簿価を下回り、資産を切り崩せば株主還元できると見られる。
②不動産含み益が大きい。時価ベースで1000億円超は格好の標的。
③ガバナンスが硬直的。役員は長期在任で生え抜き人事中心。
④株主還元が弱い。配当や自社株買いが控えめ。
⑤成長戦略が曖昧。デジタル化の遅れや古いモデル依存。
▷過去の事例では?
・昭栄(3003)…①②。敵対的TOBは失敗も、後にヒューリック統合で大化け。
・東京スタイル(8006)…③④。委任状争奪戦では勝利したが、最終的に統合され消滅。
・阪神電鉄(9043)…②③。46%を握られ、阪急との統合に追い込まれた。
・黒田電気(7517)、エクセル(6788)…①④⑤。株主提案からTOBを経て解体に近い結末。
いずれも「資産は厚く、経営は古く、株価は安い」。典型的な狙われ方だったなあ。
▷髙島屋の現状
①PBRは0.78倍。
②不動産含み益は約1200億円。
③役員は長期在任、生え抜き中心。
④DOE1.3%水準で還元は控えめ。
⑤デジタル化遅れ、老朽ビルや広告課題。
5つすべてにチェックが入る。典型例じゃないか!これじゃ狙われるのも仕方なし。
▷旧村上ファンド系の出方
父・世彰氏はショック療法の短距離走。
娘・絢氏は兵糧攻めのマラソン型。フジ・メディアHDで15%を積み上げた動きがその象徴だ。
▷株価の見通し
現在の株価1,600円台はアクティビスト・プレミアム込み。提案が具体化すれば2,000円、動きがなければ1,500円割れ。どちらに振れるかは「アクティビスト」次第だ。
▷巳之助の独自視点
旧村上ファンド系はかつてダークなキャラの印象が強かった。だが今は、アクティビスト介入で企業が立ち直り、他の株主に歓迎されることも多いよね。
ただ、今回5つにチェックが入ってしまった髙島屋に「味方する株主」の方が不自然だ。兵糧攻めでいぶり出されるように攻められ、最後は訳のわからない最悪の幕切れになるぐらいなら、一気に刷新した方が良い。何百年も歴史を持つ老舗だから変わりにくいのは想像できる。しかし未来の「髙島屋ファン」がいなければ、過去の栄光もすべて消えてしまうよ。
まさに髙島屋は「アクティビスト教科書の典型例」。父のショック療法から娘の兵糧攻めへ。株主は長期戦を覚悟する他ない。
皆さんは「兵糧攻めを見守るか?」か、「開城を待ち望むか?」かどっちかな?
NISA Bros.よ、教えて!
▶巳之助メーター 2ニョロ 監視
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
アクティビスト・プレミアムで押し上げられた株価。買うなら提案前の一押し、失望売りもあるから怖さもあるが、監視銘柄としての妙味は十分。
■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。