今回の東京五輪で最も多くの話題をかっさらったのはスケボーの女子選手たちではないだろうか。日本のガールズスケーターは、獲得したメダルの多さや平均年齢の低さ、競技中のファッションなど世間を騒がせる話題に事欠かず、一夏にして日本中をスケートボードに夢中にさせた。彼女たちのフレッシュかつエネルギッシュな魅力は今年の夏をさらに暑くしただろう。そんな魅力いっぱいの彼女たちだが、今回はそのファッションに着目したい。スケボーはファッションと密接につながっているスポーツであり、どのような服を身に纏ってプレーするかが他のスポーツよりも重要となる。プレーだけでなく、格好や立ち振る舞いまで含めてその選手のスタイルとなるのだ。スケボーだけでなくファッションも楽しむ、彼女たちの魅力に迫る。
まず紹介したいのが、スケートボード女子ストリートにて8位だった西村碧莉選手。大会前には金メダル有力候補との噂も絶えなかった西村選手だが、開会式前日の練習中に車椅子に乗るほどの重傷を負ってしまった。スケボーガールズシーンの若き開拓者として世界中を牽引してきた西村選手にとって、スケボーがオリンピックの公式競技として認定された初年度、さらに母国での開催という条件の揃った東京五輪にかける思いは誰よりも強かったはずだ。しかし、そんな事情を微塵も見せずに有明アーバンスポーツパークに現れた西村選手は、太陽に映える真っ白なウェアの上下に同じく真っ白のキャップという潔いコーディネートだった。オールホワイトに綺麗なブロンドのロングヘアーがなびき、そのあまりの眩しさに多くの人の目を一瞬にして奪った。小麦色に焼けた肌も相まって、彼女の周りにはスケボーの発祥地である西海岸のような雰囲気が漂っていた。辛い事情をおくびにも出さずに自分らしいファッションに身を包んで戦った西村選手には多方から賞賛の声が寄せられた。西村選手にとっては不本意な結果となった東京五輪だが、彼女のプレーとファッションは日本中の記憶に残っている。
また、日本のガールズスケーターたちのファッションの中で特に着目したいのがロングヘア率の高さだ。従来、オリンピックに出場するような女子アスリートはショートヘアが多いというイメージがある。競技中に邪魔になるし、手入れに時間がかかるというのが主な理由だろう。一方で、スケボーの女子選手たちのロングヘア率は脅威の高さで、オリンピックに出場した6名のうち西矢椛選手と岡本碧優選手を除き4名がロングヘアスタイルなのだ。それに加えて競技中でも髪の毛を束ねない選手もいるのだから驚きだ。特に開心那選手と中山楓奈選手は腰ほどまである美しい黒髪を持っている。長い黒髪をなびかせながらアクロバティックに跳ぶ姿は、日本だけでなく海外でも注目を浴びている。スケボー選手のロングヘア率の高さは、冒頭でも述べたように、プレーだけでなくファッションでも自分を表現するという決意の表れのようにも思える。オシャレは競技の妨げになるという古い慣習をとっぱらい、自分のスタイルで魅せるというスポーツの新たな時代はすぐそこまでやってきている。