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LVMHがNIGOを「ケンゾー」に起用したのが間違いでなかった理由が分かる展覧会

Oct 28, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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「ケンゾー」のアーティスティック・ディレクター NIGO

「NIGO’s VINTAGE ARCHIVE展」が9月14日から11月13日まで新宿の文化学園服飾博物館1階及び2階で開催されている。NIGOは2021年からLVMHのブランド「ケンゾー(KENZO)」のアーティスティックディレクターに就任している。今回の開催はそれを祝った意味合いがあるのだろう。「ケンゾー」はLVMHが保有するラグジュアリーブランドという認識が一般的である。ラグジュアリーブランドというのはブランドの創業者が死去または引退後もそのDNAが他者によって引き継がれ現代でもそれなりのビジネスを全世界的で行っているブランドのことである。「ケンゾー」は日本人デザイナー高田賢三によって1970年に「ジャングル・ジャップ」のブランド名で始められたのがその創始である。高田賢三は1999年にブランドから退いた。その後ジル・ロズィエ(ウィメンズ)&ロイ・クレイバーグ→2004年アントニオ・マラス→2012年ウンベルト・リオン&キャロル・リム→2020年フェリペ・オリヴェイラ・バティスタとアーティスティックディレクターが目まぐるしく変わり、2022年1月発表の2022-23秋冬コレクションから前述のNIGOにバトンタッチされている。NIGO(1970年12月23日生まれ。群馬県前橋市出身)は高田賢三と同じ文化服装学院出身で高田賢三のことを以前から尊敬していたという。またLVMHとも「ルイ・ヴィトン」でコラボしていたこともあり、LVMHのオメガネにかなったということなのだろう。

私はファッションを、「エレガンス系」と「非エレガンス系」に分類している。元祖「ケンゾー」は「エレガンス系」であり、NIGOのファッションは「非エレガンス系」である。これは大半の方に字面だけで理解してもらえると思う。では、LVMHがNIGOを「ケンゾー」に起用したのは間違いなのかということになる。少なくとも「字面だけ」では、その起用はファッション通には「意外」だったはずである。しかし必ずしもそうでないことを冒頭で紹介した「NIGO’s VINTAGE ARCHIVE展」に行って見ると理解することができるのだ。

この展示には、NIGOが収集した「リーバイス(Levi’s)」「リー(Lee)」「ラングラー(Wrangler)」のデニムを始めとして、ワークウェア、アロハ、スカジャン、ミリタリーなどのアメリカンカジュアルのアイテムから構成されていて、NIGO自身が「展覧会のタイトルである『未来は過去にある/THE FUTURE IS THE PAST』は僕のモノ作りのテーマそのものです」と今回の展覧会の展示を解説した「the SUKIMONO BOOK」(原田学編集)の「ごあいさつ」で記している。また「自分にとって師であり、友でもあるヴィンテージコレクションは今まで殆どの人の目に触れることなく、自分の参考書として保有してきました」とも。ヴィンテージコレクションを師であり友であるとはなかなか言えるものではない。

要するにNIGOの今までのクリエイションはいわゆる音楽の世界でいうところのサンプリングなのだが、DJでもあるNIGOはファッションでもいわゆるイイトコどりの手法を高度に会得しているようだ。この展覧会はそうしたNIGOの「頭の中」を見ることができる。こういうサンプリングテクニックをニセモノだコピーだと言う方は現代のファッションと言うものが分かっていない。

NIGOが手掛けた「ケンゾー」の2回のコレクション(6月25日のメンズとウィメンズのジョイントショー)はデビューコレクション(1月24日)に比べてかなりNIGOらしさが前面に出ている。「あ、これ展覧会で見かけた展示物じゃない」というのもかなり出ている。高田賢三の完全退任の後、エレガンスとカジュアルの間を行ったり来たりしていたブランドにやっと落ち着いた本来の姿がNIGOによってもたらされたのではないか。前述したように高田賢三による元祖「ケンゾー」は「エレガンス系」でありNIGOは「非エレガンス系」ではあるが、「ケンゾー」を手掛けるNIGOは、サンプリングの天才であるファッション・プロデューサーなのである。サンプリングの帝王がLVMHのラグジュアリーブランドのアーティスティックディレクターに日本人として初めて就任しこうしたコレクションを見れるのを私は実に誇らしく思っている。

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