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Global|朽ちる名門企業と生き残るラグジュアリー・ブランド

Jun 1, 2018.久米川一郎Tokyo, JP
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今月「インタビューマガジン(Interview Magazine)」が休刊を発表、50年以上続いた歴史に幕を閉じた。アンディ・ウォーホルが創刊し、ポップカルチャーのアイコン的存在の雑誌だったが、前編集長に給料未払いで訴えられるなど最近は惨憺たる状況だった。もともとウォーホルのファンだった億万長者のピーター・ブラント(Peter Brant)がウォーホルの死後に買収し、再始動した同誌だが苦しい財政状態を改善することができなかった。

一世を風靡した雑誌だとアメリカ音楽史を象徴する「ローリング・ストーン(Rolling Stone)」誌は経営悪化を受け、シンガポールの企業に身売りしている(2016年)。国内ではアート分野で権威のある「美術手帖」の破綻が大きな話題を呼んだ(CCCが2015年に買収)。こうした動きは紙媒体だけでなく、かつて輝きを放っていたブランドにも起きている。帽子の代名詞とも言えるイタリアのハットメーカーのボルサリーノ(Borsalino)は、債務問題で昨年一時破綻の危機に瀕した。現在はブランド継続を発表しているが、年商は1800万ユーロ(約23億円)と、老舗で名がある企業としては驚くべき規模の小ささで、経営へのやる気を疑うほど売り上げが縮小している。「NINEWEST(ナインウエスト)」や「ANN KLEIN(アン・クライン)」を抱えるシューズメーカーのNine West Holdings(ナイン・ウエスト・ホールディングス)も破産手続きを進めていて、不調の要因としてアメリカの百貨店の低迷やアジアや中東の小売市場の変化をあげているが、主因は差別的だと批判を受けた広告や若年層を捉えられなかったイメージ戦略にあると言われている。

ファッションから離れると名門ピアノメーカーでピアノの代名詞とも言うべきスタインウェイ・アンド・サンズ(Steinway & Sons)は2013年にファンドへの身売りを発表。玩具・ベビー用品企業の「TOYS"R"US(トイザラス)」は今年1月に182店舗を閉鎖し破産手続きを終了させようとしている。「TOYS"R"US」は経営悪化の最大の要因としてアマゾンなどのIT小売企業の台頭をあげているが、それは後付けの理由で既存の資産に頼って顧客に新鮮さを届ける努力を怠っていた結果が悲惨な現状を招いた。

一方、同じように歴史やブランド力のあるラグジュアリー・ブランドは、売上高の上下はあれど破産に追い込まれるような事態はなく安定してブランドのプレステージを保っている。前述のブランドとの違いは、伝統を保ちながら革新し続けているという点だろう。ラグジュアリー・ブランドは、ミラノコレクションやパリコレで年2回のビッグイベントと呼べるような大規模なファッションショーを始めとして、デザイナーがスランプに陥れば、デザイナー交代を行い、過剰とも言えるコラボレーションを実施し、ミレニアル世代の需要発掘など、話題作りを怠らずブランドの印象を絶えずアップデートしている。一度得た名声や歴史、権威に依存し、安心しきって時代に合わせることをしなかったブランドが、新興ブランドに追い上げられた結果として衰退するのは驚くに値しない。ブランドが飽和状態の中で、今後も淘汰は続いていく。変わることを怠るような名門企業に明日はないだろう。

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