ダニエル・アーシャム(以下DA):前回の個展の時から、私の作品におけるシンプルなアイデアと素材の扱い方は”削ぎ落とす”という点で、日本人に共鳴するものがあると思っている。日本には不完全の美と滅びの美学という哲学があり、これは私の作品への気配りや展示方法に通ずるものがある。その精神を私のライフスタイルに取り入れられたらと思っている。
これまでの多様な業種とコラボレーションしていますね。その中の一つにadidasがありますが、このコラボレーションはどのように始まったのでしょうか?またコラボレーションする上で難しさを感じたことはありますか?
DA:一番最初にadidasとコラボした時は、彼らの理念や使っている素材について考え、作品の素材を扱うのと同じように、3つの異なる作品を作った。私の作品の多くは時間の流れを表現していて、最初のスニーカーは”過去”をテーマに1970年代のランナーをベースに制作した。2つ目は”現在”で、ブースト・テクノロジーを採用した。3つ目は4Dランナーを使い”未来”の姿を表現した。。なぜなら、adidasは本当に自由になんでもやらせてくれる、素晴らしいパートナーだった。普段はなかなかそういうサポートはないから嬉しかった。
彼らから”縛り”を感じることはありましたか?
DA:「あなたがしたいことが、私たちのしたいことだ」と言ってくれた。スニーカーのパッケージで、私は一度開けたら閉められない、タイムカプセルのようなものを作りたくて、規模の大きい企業では難しいかと思ったが、彼らは実現してくれた。
これまでのコラボレーションで柔軟に制作できなかったことはありますか?
DA:私は常に人を見て、判断する。adidasは会社としてではなく、私がもともと知り合いで尊敬している人物からのアプローチだった。一度相手について知り、信頼関係を作れたなら、コラボレーションは上手く行くと考えている。
アーティストとして、自らコラボレーションの機会を探すことはありますか?
DA:自分で探すことはしない。相手から声が掛かる。
最後に、アートとビジネス(収益化)に対しては様々な意見がありますが、アーティストとしてどのように考えていますか?
DA:世界は大きく変化していて、いろいろな企業が自分たちの製品について再考するためにクリエイティブな人を求めている。私の作品は時には非常に高価で、人々に受け入れられないこともある。高校生が必ずしも私のギャラリーに来るとは限らない。しかし、彼らにとってadidasとのコラボレーションのようなプロジェクトを通して、アートと繋がるのは興味深いことだろうと思うし、それが彼らにとってアートに触れる最初の機会になり得る。そこで興味を持てば展覧会に来るかもしれない、こうした活動は私の作品を見る人の範囲を広げることにとても役立っている。企業も若い世代にリーチするためにコラボレーションをしているのだろう。
PERROTIN - Daniel Arsham「カラー・シャドウ」展
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
会期:5月23日〜6月30日 11:00-19:00(月曜・日曜・祝祭日は定休)
NANZUKA - Daniel Arsham「Architecture Anomalies」
東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビル B2F
会期:5月23日〜6月30日 11:00-19:00(月曜・日曜・祝祭日は定休)
共同創作は、ブランドにとってこれまでにない存在を作ると言える。創作から生まれたものは複製し難く、特別なものだ。親近感のある人物やユニークな人物と協業することで、消費者の間につながりをもたらし、そこに関連性が生まれる。さまざまな業界と関わる新たな機会にもなるだろう。今のコラボレーションには、消費者の参加意識が欠かせない。それは次の流行と社会的変化にも深く関わっているではないだろうか。