カナダのファッションEC企業SSENSE(エッセンス)は5月3日、初の実店舗となる旗艦店をカナダ・モントリオールにオープンした。有名建築家デヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)のカナダでの初プロジェクトとしてデザインされた旗艦店は、モントリオールの歴史的にも古い区画にあり、ノートルダム聖堂の隣にひっそりと佇む19世紀の建物だ。時代を感じる外観はそのままに、“ビルの中のビル”と表現された店内にはモダンなセメントのインテリアが置かれている。
店舗のコンセプトとデザインも従来の発想を覆すユニークさだ。旗艦店では、先進的なアイデアと技術を用いてオンラインとオフラインの融合を目指し、オンラインで商品とスタイリストを予約して実店舗でフィッティングをする、“在庫ゼロ”のパーソナルショッピング体験を提供する。SSENSEのオンラインの価値観を現実に持ってきたような感覚だ。加えて、ウェブサイト(montreal.ssense.com)とアプリで、顧客は2万点以上のオンラインで掲載しているアイテムを予約し、24時間以内に店舗で試着することができる。5階建ての店内には、2フロアに分かれて8部屋のプライベートフィッティングルームがあり、これらはオンラインショップを具現化したものと言っていいだろう。フィッティングルームの他に、会期ごとのアートインスタレーションやコーヒーショップ、本屋なども併設する。また今回の店舗では、Vertical Lift Module(VLM)という技術を用いて、オーダー通りに製品の配達や予約を実行するハイテクな倉庫管理システムも採用している。
SSENSEの時代の最先端とも言えるオフラインの旗艦店は、今日の加熱するEコマース市場に新たな視点をもたらすだろう。同時にそれは、“moving culture forward”という、SSENSEの根気強い実行力と世界を見据えた理想を内包した精神を真に映し出している。
オンラインとオフラインの融合で常に課題となるのが双方のカニバリだ。ECが賑わえばリアル店舗も賑わうということはなく、既存顧客の購買先が変わっただけに過ぎない。ECと従来型小売のそれぞれが実店舗の在り方を模索しているが、購買の便利さを向上するものが多く、新規顧客を獲得できるような施策はまだ出てきていないように感じる。