
街のクリーニング店が過去最多ペースで姿を消している。帝国データバンクの調査によると、2025年1〜9月に倒産したクリーニング店は18件、休廃業・解散は34件に達し、合計52件が市場から退出した。テレワークの浸透、ビジネスウェアのカジュアル化、自宅で洗える高機能素材の普及など、生活様式の変化が長期的にクリーニング需要を押し下げている。
倒産件数は9カ月間の累計で前年の17件をすでに上回っており、コロナ禍後に「あきらめ倒産・廃業」が相次いだ2023年(通年53件)に迫るハイペースだ。2025年は過去最多に達する可能性があるうえ、統計に表れない零細店の自主閉店も多く、実際の退出数はさらに多いとみられる。
テレワークが定着し、毎日のYシャツやスーツ着用が必須ではなくなった。オフィスではノージャケット・ノーネクタイが一般化し、働く人々の服装は一気に多様化。水洗い可能なスーツや、家庭でケアできる高機能素材の普及も進み、仕事着をクリーニングに出す理由そのものが弱まっている。
さらに、低価格で手軽に利用できるコインランドリーの増加、そして家庭用洗濯機の進化も追い打ちとなった。洗濯槽の除菌機能や温水洗浄、高級衣料に対応したコースなど「家でプロ並みに洗える」環境が整い、クリーニング店を日常的に利用しない家庭が増えている。
一方で、クリーニング店の経営環境は厳しさを増している。ドライ溶剤や洗剤といった資材の高騰、電気代・ガス代の上昇、人件費増など、運営コストは右肩上がりだ。だが、多くの店が価格転嫁に踏み切れない。客離れを恐れて値上げを先送りした結果、利益率は低下。資材高に耐えきれず、赤字が続いて倒産に至るケースが増えている。
業界を根底から揺るがしているもう一つの要因が、高齢化と後継者不足だ。地方を中心に、創業30〜50年の個人店が多いクリーニング業界では、店主の高齢化が深刻だ。洗濯機やボイラーが故障すると、数百万円規模の設備投資が必要になるが、将来の需要縮小を考えると更新に踏み切れない。結果、機械の故障をきっかけに廃業を決断する店が少なくない。
こうした状況は、中小だけでなく大手にも影響している。白洋舎が11月14日に発表した2025年12月期の第3四半期決算では、売上高こそ前年同期比2.0%増の330億8400万円だったものの、営業利益は同7.0%減の17億1500万円、純利益は同17.0%減となる13億3500万円と減益となった。同社は、在宅勤務の浸透や服装のカジュアル化により、クリーニング需要は中長期的に減少傾向が続くと分析している。
白洋舎は生き残り策として、店頭のクリーニングに加え、集配サービスや宅配便で受け渡しする「らくらく宅配便」など、多様なサービスを展開している。業界全体でも、抗菌加工、保管サービス、アパレルとの連携など、付加価値型のサービスへと軸足を移す動きが広がっている。
衣類の価値観が大きく変わる中で、従来型クリーニングの需要が以前の水準に戻る可能性は低い。今後は、衣類保管や宅配・集配網の強化など付加価値を打ち出し生き残りを図るが、業界のビジネスモデル自体が変革期を迎えることになりそうだ。












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