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中世の道化師はパンクの一種だという「コム デ ギャルソン オムプリュス」

Jul 22, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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「コム デ ギャルソン オムプリュス」展示会(PHOTO:SEVENTIE TWO)

「コム デ ギャルソン オムプリュス(COMME des GARCONS HOMME PLUS)」を始めとするコム デ ギャルソン社のメンズブランドの2023年春夏物の展示会が7月19-21日まで南青山の本社で行われた。コロナ禍のため2020年3月のウィメンズコレクションを最後にパリでのリアルショー発表を行わなかった同社が、今回のパリメンズコレクションから復帰した。6月24日にパリ2区のカプシーヌ通り沿いの建物でショーは行われたという。

「コム デ ギャルソン オムプリュス」のタイトルは「ANOTHER KIND OF PUNK」。「中世における宮廷道化師は癒しを与える存在だけに限らず主君に別世界、斬新な考え方をアドバイスする役を持つ存在でもあった。その事に興味を持ちました。おそらく中世の道化師はパンク精神の持ち主であったのではと想像する」。

プレスに配られたコレクションについてのリリースだが、恐らくデザイナーの川久保玲の言葉だろう。確かにシェークスピアの戯曲に登場するような中世の道化師は主君に対して大胆不敵な皮肉まじりの批判をしたりすることもあったという。川久保玲が中世宮廷道化師に関する著作を読み漁って、自身のクリエイションの根幹であるパンク精神に通底するインスピレーションを得たのだろうか。その発想にはちょっと無理がありそうだが、披露されたコレクションはテーラードがかなり盛り込まれ、パンク色はさほどないが完成度はなかなか高い。

登場したモデルのほとんどが顔に付けたマスク(お面)はヨーロッパで調達したアンティークだという(もちろん非売品)。

ストレートなパンク精神ではなくて、言ってみれば「面従腹背」の複雑な精神構造を持った道化師という存在をテーマにしたところが川久保玲の創作史の中では極めて異例なことのように思える。これは何から影響を受けているのだろうか。思い付く事件なら2月24日のロシアのウクライナ侵攻ということになるが、それが「面従腹背」とどう結び付くのか。「正面きった批判は難しくとも絶対的な為政者への批判は可能なのだ」ということなら分からないでもないが。

今年10月11日には80歳の誕生日を迎えるデザイナー社長の川久保玲の静かなるミステリアスなパンクファッションというところなのだろう。ついでに言うなれば「コム デ ギャルソン」ブランド設立は1969年だが株式会社コム デ ギャルソンが設立されたのは1973年。来年が会社組織になって50年という節目になる。すでに国内外のグループ会社を入れると社員数は1000人を数える大企業に成長してきたのは、ある意味デザイナー企業としては奇跡ですらある。

繊研新聞が毎年行っているファッション専門学校へのアンケート調査がある。今年の調査は全校の約1400人のファッション専門学校生を対象に行われた。コム デ ギャルソン社は「注目している企業」の部門で第4位(昨年第5位。ドーバーストリートマーケットギンザの3票も含む)、「就職したい企業」の部門で前回と同じ第2位にランクインされた。デザイナー企業としてはベスト10内にランクインしたのは同社のみ。ライバルのヨウジヤマモト社やイッセイミヤケ社に差をつけた。少なくとも創業デザイナーの川久保玲のブランド(「コム デ ギャルソン」「コム デ ギャルソン オム プリュス」)に関してはアヴァンギャルドなファッションというよりアートと呼べるようなウェアが多いだけに、そうした専門学校生の支持の高さは意外でもあるが、誇っていいことだろう。

ちなみに今月4月に新卒として同社に入社した新入社員は25人(女性17人、男性8人)だったという。毎年20人前後の新卒学生を採用している同社だが、その人気を考えると倍率も高そうだ。

 

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