・スパイバー(クモの糸による繊維開発):140億円
・百貨店の寧波阪急(2020年完成):110億円
・シタテル(インターネットによるアパレル生産のプラネットフォーム事業運営):10億円
・MMラフルール(NY発D2Cブランド):25億円
・三越伊勢丹ホールディングスと共同運営していたICJデパートメントストア(マレーシア):10.7億円
・45RPMスタジオ:8億円
・IMCF(ファッションブランドパーバーズ 「PERVERZE」やスドーク「SODUK」を運営):13億円
・バルクオム(三井物産も出資しているメンズ化粧品):5億円
上記が主だった投資先である。スパイバーに関しては当初30億円の投資だったが、大手投資会社カーライルと共同で2021年9月に110億円の追加投資を決定。これがファッション関連投資では目玉になったが、量産化による収益化はまだまだ先になりそうだ。
スパイバーや百貨店の海外進出などの比較的大型案件への投資は分かりやすいが、ファッションブランドへの投資はどんな規準で決めているのだろうか。「AブランドよりもBブランドの方が可能性がある」というのをどうやって決定するのか。少なくとも投資されたブランドはいわゆる「カワイイ!!」と形容される日本のゴスロリなどとは無縁のブランドである。ふつうの日本ブランドが海外で特に好評を博しているという話はあまり聞かない。
官民ファンドとして、その投資に税金が投入されれば、「公正」「公平」ということが求められるわけで、旧通産省主導で「輸出立国日本」を方向付けした昭和30年代風のことをしても、現代ではなかなかうまくはいかない時代になっている。クールジャパン機構が法律(株式会社海外需要開拓支援機構法)のもとに運営されていて、トップの自由裁量やリーダーシップが発揮されにくい組織だったことも指摘されている。これだけSNSが発達した時代にうまくいくブランドは国の力など借りなくても独立独歩でうまくいくはずだし、国の力を借りて一時的にうまくいってもその後はたかが知れている。ファッションで成功するというのはそれぐらい厳しいものではないか。
加えてクールジャパン機構の投資に関しては、政治家などが口ききをしているケースがかなりあったという。「政治」の匂いがかなりするのだ。このクールジャパン機構がスタートした2013年は、前年2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣の「海外にはばたく日本」プロジェクトのひとつとして誕生したものである。巨額の赤字を残して6月末に解散する東京五輪組織委員会、最近安倍前総理と黒田東彦現日銀総裁が主導で進めたアベノミクスの目玉だった円安戦略が輸入インフレという弊害をもたらしているように、このクールジャパン機構も第2次安倍晋三内閣が生み落とした問題児なのかもしれない。