小西:「特ダネ!」に登場して好評だったので、日本テレビの「スッキリ」からも声がかかりましたね。こっちは加藤浩次さんがMCで、最初のうちはテリー伊藤がサブ司会をやっていましたね。「芸能界ピリ辛オシャレコンシェルジュ」(それ以前は「ドーンとウォーキング」)のコーナーを担当しました。出演したのは2009年からで、2015年までの6年間。「とくダネ!」の方は22年か。長かったね。
三浦:テレビ出演のそもそものきっかけはなんでしたっけ?
小西:いや簡単ですよ。1990年代に僕がバァーッと飛ぶ鳥を落とすくらいの勢いで、「フィッチェ ウォモ(FICCE UOMO)」っていうブランドをやっていた。「これはヤバイことになる。恐ろしい会社になるな」っていう感じがしていたんだけれども、時代の流れっていうのはそううまくはいかなくてね。ちょっとずつ苦しくなっていった。まあファッションが低迷し始めた時期かな。
三浦:1990年代の終わりぐらいですね。
小西:まあだからいわゆる個性的な洋服が要らなくなった時代に、その当時もう超個性的だったから、僕たちは要らないというシビアな環境におかれちゃったわけよ。
三浦:当時のドンさんの「フィッチェ ウォモ」は、今国立新美術館で開催中の「ファッション イン ジャパン1945-2020 流行と社会」(9月6日まで)でも紹介されていますね。今見ても確かに超個性的ですよ。「フィッチェ ウォモ」はどれくらいまでいきましたっけ?年商で100億円はいってました?
小西:上代ベースで70億円くらいだよ。
三浦:100億円いかなかったかな?
小西:100億円はいってない。オーナーは僕だけだったから、ちゃんと覚えてるよ。かなり資産ができていて、僕はファッションに賭けていたから、日本を元気にしてやるんだって本気で思っていた。しょぼいファッションショーばっかりやりやがって、それに、売れ筋、売れ筋って追っかけて、どういうことなんだよって、怒っていた。だからなんとなく「衣料品」は作りたくないの、興味ないのね。で、どんどんどんどん毎年毎年何億円っていう金をつぎ込んで行って作品を作ってイベントをやったりファッションショーをやっていた。そうするともう全部底をついてきちゃって。どうしたもんだろうと思っている時に、捨てる神あれば拾う神ありということでたまたまフジテレビから「特ダネ!」の話があった。
三浦:どうして声がかかったんですか?
小西:その当時テレビもつまらなくて、人気の女優があのドラマで着てる洋服はどこのブランドで流行っているんですみたいなこととか、彼女の持ってるバッグはどこどこのでいくらですとか、つまんねえこと言ってんだよ。それで僕は、「このオバさんは本当に派手なものが好きで全身柄柄柄しか着ないババアだけど、こういう人って欲が深いし、やっぱり体型を見せたくないから柄柄柄って着るんだよ」なんて話をするとバカウケしちゃってさ。またある料理人がいつも詰襟のジャケットを着てスタジオにくるわけ。まあ誰とは言わないけどさ。いまや親友の一人だけどさ。そうしたら「どうしてこういう黒の詰襟を着ているんでしょうって」って聞かれたの。それで「育ちもいいし、そこそこウチもいいんじゃない?だから自分のボロを出したくないんじゃないの。常にカリスマ、常にそれっぽく見せたいっていう変化を嫌う人なんだよ。ずるいやつは大体さ、こういう服着ているんだよ」って言ったらまたまたウケちゃってね。
三浦:なるほど(笑)。
小西:スタイリストとかファッションのことなんかよくわからないのに、今年の流行色とかさ、どこのバッグは何色があっていくらとかさ、そういうこと言うやついるじゃない。僕はそういうことは絶対したくなかったから、そういう話をしたんだよ。どうしてそういうことを言うんですかって聞かれたから、いや僕はファッションっていうのはやっぱりその時代を映し出す、そしてそれを着ているひとの内面を映し出すものだって答えたの。 いま思うと名言だよねえ。
三浦:大したもんですよ。テレビでそれを言えたのは。
小西:当然私はど真ん中にいるからわかるよね。時代性っていうのは。着ているとさ、直感で分かるよね。この人、政治家の割にはすっごい悪いやつで、国民の方なんか向いてないって話をするわけよ。頭なんかちょっとキューピーちゃんみたいにね、それっぽい頭にしたりさ、「ジョン ロブ(John Lobb)」の一番新しい靴履いてるけど、この政治家はどっち向いてんだろうと思うわけ。国民の方なんて絶対向いてないよ。そういうことを言ってたら数年後に本当にそういう風になっちゃったりとかさ(笑)。
三浦:それが「特ダネ!」の中ファッションチェックする「おしゃれ泥棒」ですね。
小西:そうそう。例えば黒木香さんが、ん、瞳さん?どっちだっけ女優 は?
三浦:黒木瞳さんです。黒木香は村西とおる組のAV女優です。
小西:瞳さんだよ。瞳さんはその頃は女優であり母でありスターであり、それですごい優等生的なカリスマのイメージもっていたのよ。でも僕は彼女を見るとちょっとなんかこうちらっと見えるのよ。で、この人はたぶんね、そんな淑女じゃないな。案外好きなんだなと俺は思ったわけ。そしてね、僕は「ヒョウ柄を好む女性ってのは意外と男好きな人が多いんじゃないか」と話したのよ。特にいわゆる男好きの度合いっていうのは何かというとヒョウ柄なんだよ。「一番怖いのはね、ヒョウ柄を下着に使ったりとか裏地に使ったりっていう女性。これはなかなかしたたかな女性です」って言ったらさ、黒木さんからクレームがきちゃったんだ(笑)。そんなのいかにもテレビ的じゃないですか、そういうところで視聴率がすごく取れたんですよ。それで面白いということになって定着したのね。
7月23日アップ予定の第3回に続く
ドン小西プロフィール
1950年10月9日、三重県津市生。文化服装学院卒業後、アパレルメーカー勤務を経て、1981年に小西良幸デザインオフィスを設立。自身のブランド「フィッチェ ウオモ」はそのアヴァンギャルドなスタイルで、ビートたけしを始めとした著名人にもファンが多く、一躍時の人になった。1999年からはフジテレビの情報番組「とくダネ!」にも出演し鋭い切り口のファッションチェックコーナーが人気を博した。現在は名古屋学芸大学などで特別講師を務め三重県の観光大使を務めるなど、多岐にわたって活躍中。芸能プロサムデイ所属。