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Belgium|不思議の国のドリスの身売りの真相は?

Jun 29, 2018.久米川一郎Tokyo, JP
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©️John Dolan

6月14日、ベルギーのファッションブランド「Dries Van Noten(ドリス ヴァン ノッテン)」とスペインのファッション&フレグランス企業のPuig(プーチ)は、Puigが「Dries Van Noten」の過半数株主になるという共同声明を発表した。デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)は引き続き少数の株式を保有し、チーフ・クリエイティブ・オフィサー兼取締役会会長として同ブランドに留まる。

「Dries Van Noten」は1986年に創業、ドリスは「Ann Demeulemeester(アン ドゥムルメステール)」のアン・ドゥムルメステールなど”アントワープの6人(Antwerp Six)”と称されるデザイナーの1人で、同じベルギー出身では「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」のマルタン・マルジェラと並び評価されている。「Maison Martin Margiela」は2002年に「DIESEL(ディーゼル)」を展開するOTB(オンリー・ザ・ブレイブ)の傘下に入り、マルジェラ自身は2008年に引退、2014年にジョン・ガリアーノ(John Galliano)をデザイナーに迎え、翌年にはブランド名を「Maison Margiela(メゾン マルジェラ)」に変更した。Ann Demeulemeester」はアンが2014春夏コレクションをもって引退し、現在はセバスチャン・ムニエ(Sebastien Meunuer)がデザイナーを務めている。

ドリスは毎回パリコレでジャーナリストの印象に残ったブランドを聞くと、必ず名前があがると言っていいほど業界からの評価は高く、ライティングから演出まで凝りに凝った素晴らしいショーを行っていることは間違いないが、実際百貨店などの売り場に並んでいる商品は、コレクションで見た時とは違って中年女性向けの地味な洋服のように見えるから不思議である。

もう一つ驚きなのは年商が110億円程度だということだ。ジャーナリストやファッション・フリークにこれだけ愛されてこの規模は少々小さ過ぎるのではないか。日本では伊藤忠傘下のライカ(2011年に事業停止・解散)が1998年から2003年までライセンス事業を展開していたが、当時のスタッフによるとドリス本人はとにかく注文が多い難しい気質の人物だったらしい。現在はトゥモローランドと共同経営で東京と大阪にショップを経営しているが、ブランドの評価や人気を考えると本来ならば日本法人があってもいいくらいである。言ってみればファッションショーに命を懸けているデザイナーといっても過言ではないので、そのコスト度外視のこだわりが経営を圧迫し、コレクション貧乏になっていたのではないか。

Puigは「Carolina Herrera(キャロリー ナ ヘレラ)」や「Nina Ricci(ニナ リッチ)」、「Paco Rabanne(パコ ラバンヌ)」、「Jean Paul Gaultier(ジャンポール ゴルチエ)」などを傘下に持ち、2017年12月期の売上高は19億3500万ユーロ(約2457億円*)でフレグランス事業をメインに成長してきた企業だ。「Dries Van Noten」は「Comme de Garçon」などと並んでLVMHやKeringといった巨大コングロマリットに属さず、インディペンデントブランドを貫いてきた最後のブランドの一つとも言えるので今回の買収は意外だった。

今年公開された彼のドキュメンタリー映画での「ファッションという言葉は嫌いだ、僕がつくるものはもっとタイムレスなもの」という発言が印象的だったが、そんなデザイナー中のデザイナーであるドリスがこれからは自分の好きなようにできない、大人の論理に振り回される未来を選択した背景には、よほど厳しい経営事情があったのか。あるいは60歳を迎えて節目を感じたのだろうか。

 

*1ユーロ=127円換算(6月28日時点)

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