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Italy|ゼニア社のトム・ブラウン社買収は大丈夫なのか?

Aug 31, 2018.久米川一郎Rome, IT
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THOM BROWNE. NEW YORK Aoyama

デザイナーと大企業の関係というのは本当に難しい。Ermenegildo Zegna Group(エルメネジルド・ゼニア・グループ、以下Zegna)は「Zegna(ゼニア)」ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして、トム・ブラウン(Thom Browne)を起用するということなのだろうか。もしそうだとしたら、Thom Browne社の企業価値は5億ドル(約550億円*)だと試算しているというが、今回の買収価格が仮に300億円だとしたら、それはあまりにもリスキーな投資だと言わなければならない。まず「Ermenegildo Zegna(エルメネジルド・ゼニア)」のクリエイティブ・ディレクターは現在アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)が務めているが、これはトム・ブラウンに早晩チェンジされるのだろう。トム・ブラウンという存在はこの50年のメンズファッションの世界に限って言っても、圧倒的なスタイルを後世に残した不滅の存在に挙げられるデザイナーである。ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)、エディ・スリマン(Hedi Slimane)の2人だけが肩を並べる存在だと思う。「それほどのデザイナーなら300億円を支払っても惜しくはないだろう」というのはしかし、正しくない。買ったのは、ゼニアモード美術館ではなくて、Zegna Holditalia S.p.A.(ゼニア ホールドイタリアS.p.A.) なのである。自分たちの「Zegna」ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めてもらうのなら、年間3億円も支払えば済む話なのである。「Zegna」のクリエイティブ・ディレクターをやってもらおうとして300億円をThom Browne社獲得のために払ったとしたら、これは本当にまずい。永久にやってもらえるわけではないし、トムが不調になっても「チェンジ」というわけにはいかないではないか。それに米The New York Times紙が推測している2017年年商150億円だが、これではたぶん赤字なのではないかと私は推測する。よくてトントン。
Stripe International(ストライプインターナショナル)Sandbridge Capital(サンドブリッジ・キャピタル)に2016年に売ったのは、ズバリ上場をするために赤字の子会社整理をするためではなかったのかという推理も成り立つのだが、どうだろう。また、Thom Browne社を買収することで「Zegna」に若々しいイメージが付与されるという言い方があるが、これもクリエイティブ・ディレクターに起用すれば十分に果たせることだから、やはりどうしても理解できない。私のThom Browne社赤字という推測はやはり間違っているのだろうか。

*1ドル=110円換算(8月31日時点)

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