9月26日に発表があったのは、LVMH(モエ ヘネシー ルイ ヴィトン)グループによるかつてのオートクチュール・メゾン「Jean Patou(ジャン パトゥ)」の買収である。かつてのオートクチュール・メゾンを買収して再興するというパターンは、「Balenciaga(バレンシアガ)」での大成功があって、「LANVIN(ランバン)」「SCHIAPARELLI(スキャパレリ)」「NINA RICCI(ニナ・リッチ)」などにチャレンジはなされているが、本格的な成功例は出ていない。Alber Elbaz(アルベール・エルバス)が手掛けた「LANVIN」はプレス関係者では大評判になったものの成功をつかみ切ったとは言えないのだ。
そんな中、LVMHが「Jean Patou」を買収した狙いは何か。今のLVMHのラグジュアリー・ブランドの陣容(ポートフォリオ)では次の時代は戦えないという判断があったのではないか。これはやはりKering(ケリング)グループが9月に「Courrèges(クレージュ)」を買収したことに対応しているという見方もできる。「Courrèges」はオートクチュールのメゾンであったことを忘れてはならないだろう。
「Jean Patou」は実は、Christian Lacroix(クリスチャン・ラクロワ)がLVMHの後ろ盾で独立する前に、チーフデザイナーを務めていて、ダリをテーマにしたいわゆるクレイジー・クチュールを発表してデ・ドール賞を受賞したのが「Jean Patou」のメゾンだったのだ。
とにかく、次の時代を戦うのには、戦力不足。つまり今のブランドの陣容は、もうかなり目一杯のところまでスケールが来ているという判断がなされているのではないか。9月のMICHAEL KORS(マイケル・コース)社による「Versace(ヴェルサーチ)」買収でも、LVMHは買収に手を挙げていたと言われているし、とにかく次のスターブランド候補を育てようという意欲が感じられるのである。今後の買収市場を展望する上では、こうした視点が重要になってくるだろう。