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大歓迎では決してない「アットコスメ」のアイスタイルとアマゾン・三井物産との資本業務提携

Aug 16, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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社長を退任して会長になるアイスタイル創業者の吉松徹郎氏(写真:セブツー)

日本最大の化粧品コミュニティサイト「アットコスメ(@cosme)」の企画・運営を行うと同時に、その消費者情報を活用した企業コンサルティングなどを行うアイスタイル社が、なんとアマゾン、三井物産、トリプルフォー、アイスタイル創業者で吉松徹郎社長(1972.8.13〜)の資産管理会社ワイの4社から無担保転換社債型新株予約権付社債(株式への転換価格262円)及び新株予約権の発行によって、それぞれアマゾン140億円(株式保有比率36.95%で筆頭株主)、三井物産15億円(株式保有比率3.98%で第5位の株式数の株主)、トリプルフォー10億円、ワイ18億円を調達した。合計で183億円の資金調達になったが、アマゾン、三井物産とはいずれも資本業務提携を結んでいる。アマゾンジャパンとの具体的な協業としてはAmazon.co.jpにおいて「@cosme SHOPPING(仮称)」のオンラインストアをオープンする予定だ。三井物産とは同社が有する国内外で幅広いネットワークを生かしたパートナーの発掘や国内流通事業における店舗開発や課題解決のサポートなどが考えられる。

アイスタイルは1999年にアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)出身の吉松徹郎現社長によって創業され、2012年には東証マザーズに上場し、同年東証一部(現東証プライム)へ昇格している。日本最大にしてほぼ唯一の化粧品コミュニティサイトということで、株価は2015年あたりから上昇を続け2018年3月16日には、史上最高値の1799円を記録している。2020年1月10日にはJR原宿駅前の「ギャップ(GAP)」日本旗艦店跡地に体験型フラッグシップショップ「アットコスメ トウキョウ(@cosme TOKYO)」をオープンし大きな話題になった。しかし、このあたりから同社の業績は一気に悪化する。2020年6月決算は、なんと初の減収でついに初の赤字(営業利益−10億3600万円、経常利益−16億5900万円)に転落し、配当も無配になった。原宿旗艦店の家賃(1〜3階で約600坪)、グローバル事業の不振、システム再開発に伴う経費増、コロナ禍による販売不振などが要因としてあげられていた。コロナ禍による化粧品市場の低迷という要因も加わって続く2021年6月決算もわずかに増収(+1.3%)だったが、営業利益(−6億400万円)、経常利益(−7億9500万円)がともに赤字。どうも負のスパイラルに入ったようで、このアマゾンと三井物産との資本業務提携が発表された8月15日に、同時に発表になった2022年6月決算は:

・売上高:344億100万円(前年比+11.2%)
・営業利益:−4億5300万円
・経常利益:−5億9300万円
・親会社に帰属する当期純利益:−5億7100万円
赤字幅は2021年6月期に比べて小さくなったが、3期連続の赤字決算である。

このままでは浮かび上がれないとの判断がアイスタイル内にはあったのかもしれない。そこで浮上したのが今回のアマゾン、三井物産との資本業務提携である。183億円の資金を(転換社債での割り当てはすべて株式に転換される予定だ)得たが、そのうちの60億円は運転資金確保のために金融機関からの借り入れていた長期借入金の一括返済(10月期限)にあてられるなど、経営的にもかなり追い込まれている印象がある。2023年6月期の「黒字化は絶対」ということになりそうだ。今回のアマゾン・三井物産との資本業務提携も両手を挙げて歓迎ということでは決してないようだ。なお9月26日付けで現プラットフォーム事業セグメント長の遠藤宗(はじめ)氏(1973年生まれ)が代表取締役社長兼COOに就任する。創業者の吉松徹郎社長は代表権のある会長兼CEOに就く。アイスタイルの不退転の決意の表れとも受け取れる。

なお前述した2018年3月16日には1799円という最高値を記録したアイスタイルの株価だが、今年5月12日には147円という史上最高値の10分の1以下の水準にまで落ち込んでいた。それでもなぜか今回の資本業務提携を予感するようにその147円を底にしてこの3カ月で倍の305円(8月12日)の株価になっていた。さらにこの資本業務提携が8月15日に発表されると、翌日の8月16日には大量の買い注文が入ってストップ高(前日の終値293円の80円高の373円)でも値段がつかない加熱状況になっている。

果たしてアイスタイルは2023年6月期黒字を達成できるのか、注目の一年である。これが未達だと、アマゾンからの役員派遣などが当然のことながら今後浮上してくることもあるのではないだろうか。

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