
ファッションビル「マルイ」などを展開する丸井グループは8月5日、2026年3月期の第1四半期決算を発表した。売上高にあたる売上収益は674億100万円と前年同期比12.9%増、営業利益は139億4900万円(同37.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は79億2000万円(同27.6%増)となり、売上収益・最終利益ともに5期連続で増収増益を達成した。
成長をけん引したのは、グループの稼ぎ頭であるフィンテック事業だ。中核の「エポスカード」は会員数が過去最高の800万人に到達し、カードクレジット取扱高も前年同期比で伸び、1兆1814億円に達した。フィンテック事業の売上収益は493億円(同12%増)、営業利益は135億円(同28%増)と、引き続き高い成長率を維持している。
一方、小売事業も回復基調を強めている。売上収益は203億円(前年同期比14%増)、営業利益は25億円(同40%増)と大幅増益を確保。とくに注目されるのが、かつてテナント撤退が相次ぎ「空き区画の象徴」とも言われた渋谷の商業施設「渋谷モディ」の再生だ。カテゴリー転換によって施設価値が向上しており、「東京アニメセンター」など物販を伴わない「売らない店」を積極導入。集英社が外壁ビジョンをスポンサードしているように、アニメ関連のイベントも積極的に展開しており、来館者層の多様化も進んでいる。
丸井グループは、百貨店・ファッションビル業界の中で、早くから「小売+金融」の二本柱戦略を打ち出してきた。特にエポスカードは、ショッピングクレジットや長期分割払いなどを軸に、若年層からシニア層まで幅広く取り込み、店舗でのリアル接点とオンラインを融合した会員基盤を構築している。このモデルは、景気変動や消費動向の変化にも比較的強い収益構造を生み出している。
小売事業でも、従来型の物販テナント一辺倒からの転換を進めており、体験型施設やポップアップイベントの活用、地域密着型の催事などで「来店目的」を多様化させている。今回の渋谷モディの事例はその象徴といえ、今後は他店舗への水平展開も期待される。
通期業績については、従来予想を据え置き、売上収益2725億円(前期比7.1%増)、営業利益500億円(同12.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益280億円(同5.3%増)を見込む。フィンテック事業が引き続き成長を牽引する一方で、小売事業の収益改善が計画通り進めば、予想の上振れも視野に入る。