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日銀「利上げ」の影響はどうなる?森ビルは大丈夫か?

Dec 23, 2022.三浦彰Tokyo,JP
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日本銀行

日銀が12月20日に決定した長期金利の変動幅拡大(0.25→0.5%)は大きな衝撃を与えた。後世に「黒田ショック」と呼ばれるようになるかもしれない。日銀のマイナス金利政策解除であり異次元金融緩和の終焉と捉える向きが多い。簡単に言えば、「利上げ」であり、銀行の貸し出し金利の上昇を意味する。庶民生活レベルなら住宅ローン、カードローンなどの金利が上昇するのでこれは見逃せない「生活苦」の出現である。

為替について言えば、例えばインフレ対策で金利を上げ続けているFRB(米連邦準備理事会)に対してマイナス金利を維持し続けていた日本との金利格差は拡大する一方だった。このため金利の高い通貨に移動するマネーの特性から円を売ってドルを買う動きになり、極端な円安が進行中だった。しかし、この日銀の利上げで、日米金利格差が縮小し、この円→ドルの通貨の一方通行がストップして、従来の「円安」から一気に「円高」の推移を始めている。円安による輸入インフレ(原油などの輸入品の国内価格の暴騰)は落ち着きを見せるのではないか。

「利上げ」のデメリットは、前述した各種ローンの金利アップの他に利上げによる円高誘導でトヨタ自動車、ソニーに代表される輸出企業の業績に対するマイナス要因が最大のものだろう。そして、いわゆる巨額の有利子負債をもつ企業へのマイナス・インパクトが見逃せない。その代表的な存在がディベロッパーの森ビルだと不動産業界では見られている。どの程度のインパクトになるかちょっと計算してみた。

森ビルの2022年3月期決算は、売上高(営業収入)2453億円(前年比+6.6%)、営業利益527億円(+同3.6%)、経常利益537億円(同+10.7%)、親会社株主に帰属する四半期純利益422億円(同+34.5%)と素晴らしいパフォーマンスを見せている。これだけなら超優良企業ということができる。しかし同決算による有利子負債はトータル1兆4309億円!そのうち社債2139億円、短期借入金455億円などを除くと純然たる長期借入金は1兆1713億円。

これが、今回の利上げによって変動金利が仮に0.2%アップしたとすると、1兆1713億×0.2%=23億円ほどになる。年間の23億円の負担増は現在好業績が続く森ビルにとっては「痛い」レベルではなさそうだ。しかし、この年々増え続けている有利子負債の1兆4309億円(2020年3月期1兆4018億円、2021年3月期1兆4275億円)、年々減っている現預金(2020年3月期3760億円、2021年3月期3693億円、2022年3月期2682億円)を見ると、損益計算書上の好決算も今後の利上げのペース次第では安閉しているわけにはいないことが分かる。いずれにせよ超低金利時代の終焉の鐘を来年4月に退任確実の黒田東彦総裁が鳴らしたということで、日本経済は新局面を迎えたと言うことが出来る。

こうした流れで、株→債券へのマネーの流れが活発化して、株式市場へのマイナスインパクトが懸念されている。しかし貸し出し金利上昇が長い業績低迷に終止符を打つのではないかと銀行株に幅広く買いが入ってひとり気を吐いていることを付記しておく。

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