いまや中国人はどの国においても最も重要なカスタマーになりつつあり、欧州のラグジュアリー・ブランドにとっては彼らに対してどう正しい接客態度でサービスを提供するかが重要な課題になっている。
4月25日、パリの百貨店「Printemps(プランタン)」内にある「BALENCIAGA(バレンシアガ)」でTriple Sのスニーカーの発売日に並んでいた中国人に対して、差別ともとれる悪質な事件が起きた。それを現場で目撃した人たちが中国のSNSであるWeiboに動画や文章を投稿し、中国国内で一気に拡散された。中国人親子が行列に割り込んだ外国人に対して注意をすると、その相手から殴られたという。投稿された動画によると「BALENCIAGA」のスタッフと「Printemps」の警備員がその親子を外に追い出し、さらにスタッフがとても無礼な言葉で他の中国人全員を追い出したうえ、割り込んだ外国人たちを逆に店内に入れたという。
この事件が発生した後に「Printemps」もすぐにWeiboアカウントで謝罪文を出した。「私たちはこの事件の被害にあった2人及び現場にいた全ての顧客に深くお詫び申し上げます」という内容で、「BALENCIAGA」はこの次の日に「昨日の朝、パリ某百貨店のカウンターで新商品の発売に向けて並んでいた顧客の間で起きた乱闘騒ぎについて、私たちはとても残念に思っています。セキュリティ担当者がすぐに介入し現場の安全を確保しましたが、影響を受けた全てのお客様にお詫び申し上げます。私たちは全ての顧客に、常に平等と尊敬の気持ちを持って対応します」といった内容の謝罪文を中国語と英語で発表した。しかしこの謝罪文では中国人の怒りを和らげることはできず、「誠意が見えない」「ごまかしている」「その事件が発生した時の状況と対処を発表していない」などとSNS上には「BALENCIAGA」を非難するコメントが溢れかえっている。その後4月28日に「BALENCIAGA」は、平等と多様性の立場を述べ、「事件の詳細などに対して調査を行っている」と再び声明を発表した。これでもなお「BALENCIAGA」は中国人に対して誠意を持った謝罪が欠けているとされ、この話題はWeiboで未だに激しく拡散されている。また、「BALENCIAGA」のFacebookとInstagramの公式アカウントには、中国人の否定的なコメントもたくさん上がっていた。
中国人は世界のラグジュアリー市場において主要な消費者になっている。ロンドンの百貨店「Harrods(ハロッズ)」では年間の収入の約7割は中国籍の客からのもので、「BALENCIAGA」が所属しているKERING(ケリング)の2017年の売上増加にも大きく貢献している。しかしヨーロッパのラグジュアリー・ブランドの傲慢な態度は、彼らの心を変えたようには見えず、中国人に対しての不公平な扱いが未だに頻繁に起きている。2016年、「Mercedes Benz(メルセデス・ベンツ)」の親会社であるDaimler(ダイムラー)グループは中国の経営幹部を侮辱する事件を起こし、2017年にはMARRIOTT HOTEL(マリオットホテル)グループも台湾と香港を公式ウェブサイト上で「国家」として表明したことに対して、中国人に非難された。さらにドイツのブランド「PHILIPP PLEIN(フィリップ・プレイン)」は、2017年に発売したTシャツに中国人を侮辱するプリントを施した。「PHILIPP PLEIN」はそれ以来、中国マーケットからほとんど姿を消してしまっている。これらの事件は中国人に大きな不満と反対をもたらした。去年、「BALENCIAGA」のTriple Sのスニーカーは生産地を中国に変えたことが明らかになったが、価格を引き下げることはできなかった。今回の差別事件は全世界で勢いにのっているブランドにとって、中国市場にとても大きな壁を作ることになった。この事件をきっかけに、多くの中国人が「BALENCIAGA」の商品をネット等で格安で売却し始めていることも報告されている。