SVT:日本発のスキンケア・ブランドが海外から高く評価されています。その代表的ブランドのひとつである「ザ・ギンザ」の魅力はどういったところでしょうか。
黒田:「ザ・ギンザ」は、ファッションブティック由来のとてもユニークで、ミニマルかつユニバーサルなブランドです。「ザ・ギンザ」のラインアップは14品しかなく、他ブランドと比較しても非常に少ない。しかし、絞り込まれている14品でもあります。リニューアルの必要性も感じていません。そもそも皮膚の生理機能に着目しているので、処方も成分も普遍的ですから変える必要がないのです。もの自体が肌質に合わせてフィットすることを実際に感じてもらえていると思います。
そして、銀座という土地の名前を冠しているブランドなので、パッと見た瞬間に製品自体が銀座の街並みに見えます。パッケージのデザインも銀座の碁盤の街並みを表現しています。ですから、日本の良さ、銀座のヒストリーをもの自身が語っています。それをお客さまが感じられる。私たちがもっとも表現したいことが、もの自体に宿っているのだと思います。こういったことが「ザ・ギンザ」の魅力であり、海外からも評価をいただけているのだと思います。
SVT:「ザ・ギンザ」にとって、ファッションブティックを原点としていることも重要なブランド価値のひとつということですね。
黒田:ファッションブティックとしての「ザ・ギンザ」は、もともと日本にまだセレクトショップという業態がなかった時代に、国内外の才能あるデザイナーやブランドを紹介していました。その時からファッションやアートを通して、時代の先端を行き、そして時代を超えてみなさまに愛される普遍的な価値みたいなものを世に送り出してきました。そこから生まれたブランドなので、その価値感は色濃く残っていると感じます。
ファッションブティックだと一般的にはメイキャップを連想しがちですが、私たちは「洋服は替えることができるが、肌は取り替えの効かない唯一無二のマテリアル」だと、そういう信念にたどり着きました。肌をきちんと着飾ることこそが表現方法だと、その当時から着目していたのです。
SVT:海外から注目されているJ-beautyについてはどのように捉えていますか。
黒田:「ザ・ギンザ」の14品のラインアップには2種類のコットンが含まれています。化粧の際にコットンを使うのは日本独特の文化で、海外の方はあまりお使いになりませんが、実はこれこそが日本の化粧文化の本来の美しさだと感じています。つまり、単に肌を保水するためではなく、化粧水をコットンで丁寧に肌に浸透させる“所作”を通して、肌をそして自分を大切に慈しむ、そういった意識が日本人の根底にはあると思います。ですから、化粧によってきれいになろうというだけではなく、化粧という所作を通して、自分自身に向き合う時間、自分を慈しむ時間をともにすることが、「ザ・ギンザ」が大切にしてきた考え方です。茶道や華道のような、儀式に近いものなのです。このような美や化粧に対する意識が、J-beautyの本質ではないでしょうか。