ヴィジュアル・アートに革新をもたらしたイギリスのアーティスト、ブライアン・イーノ(Brian Eno)が、大規模な展覧会「ブライアン・イーノ・アンビエント・キョウト(BRIAN ENO AMBIENT KYOTO)」を6月3日から8月21日まで開催する。開幕を約1カ月後に控え、5月9日より一般前売チケットを発売した。
イーノは、70年代初頭にイギリスのバンド、ロキシー・ミュージックの創設メンバーの1人として世界的に注目を集め、その後、ソロ作品や様々なコラボレーション作品を世に送り出している。音楽活動と並行して、音や光、そして映像を使ったヴィジュアル・アートの創作活動を続けている。ヴィジュアル・アートのパイオニアとしてのみならず、アンビエントの創始者であり、Windows95の起動音を制作するなど、イーノの活動は私たちに身近なカルチャーや生活にまで及ぶ。イーノが提唱した、音と光を用いた空間芸術である「ジェネレーティヴ・アート」は、ヴィジュアル・アートに革新をもたらした。また、イーノは気候変動問題の解決を目的とした慈悲団体「Earth Percent」を設立し、より良き社会を目指して社会活動を行なっている。本イベントの収益の一部も寄付される予定だ。
本イベントのラインアップは、イーノの代表作「77 ミリオン・ペインティングス」、「ザ・シップ」、「ライト・ボックス」の3作品全てが展覧されることに加え、世界初公開作品となる「フェイス・トゥ・フェイス」が展示発表されることが注目点だ。「77 ミリオン・ペインティングス」は、途絶えることなく変化する音と光がシンクロして生み出される空間芸術作品。「7700万」というのは、システムが生み出すことのできるヴィジュアルの組み合わせを意味している。「ザ・シップ」は、オーディオ・インスタレーション作品で、多数のスピーカーから個別の音が鳴ることで場所によって違う音が聴こえる。また、部屋の中を移動することで音の変化を楽しむことができる。スピーカーが視覚的特徴になるよう、照明などで空間を演出している。「ライト・ボックス」は、光りながら新たな色彩の組み合わせへと変化していくLED技術を駆使した光の作品。色彩の組み合わせの変化と共に、作品に対する見方も変化し、流れるような光の魅惑的な世界に引き込まれる。最後に、本イベントで世界初公開となる「フェイス・トゥ・フェイス」は、ランダムなパターンとその組み合わせによって、予期しないアート作品を生み出す可能性を追求した作品になっている。実在する21人の人物の顔をそれぞれ1枚の静止画に収めた小さな写真群を、特殊なソフトウェアを使い、1つの本物の顔から別の顔へとゆっくりと変化させていく。1人ひとりの本物の顔の間に「新しい人間」の長い連鎖を生み出し、新しい顔を誕生させる作品だ。
本イベントは、絶え間なく変化し続ける音と光がシンクロする空間において、部屋のどこにいたかによって他の誰とも違う経験をすることができるといった、その空間のその時にしか体験できない参加型展覧会である。また、コロナ渦において、イーノによる初めての大規模なイベントになる。イーノがどのようなメッセージを発するのか注目どころだ。イベント開催場所は、築90年の歴史ある建築物である京都中央信用金庫旧厚生センター。建物丸ごとイーノのアートで彩られる。