最初の1日で株価は大きく動く。だが、焦って売る前に見るべきは「どこまで正直に話したか」だ。アスクルは発生から半日で感染を公表し、個人情報流出の有無を調査中と明言。良品計画は即座に「自社システムは無事」「実店舗は通常営業」と発表して風評を抑えた。初動が早ければ、株主は静観でよい。誠実さの速度は、株価よりも信頼を守る。いずれにしても24時間以内に正確な発表ができるかどうかだ。
■第2段階:72時間で「仕組みの強さ」を測る
被害が出てから3日間は、会社の内部構造が問われる時間だ。代替オペレーションを動かせるか、委託先とどう連携するか。業務を止めずに回す「仕組みの余力」がある企業は、株価の戻りも早い。アサヒは受注システムが止まり、FAXと電話で受注対応するという応急策を取った。その結果、株価は1,742円(前週比▲4.2%)まで下がったが、これは「不安のコスト」だ。一方、良品計画は即座に店舗限定セールへ切り替え、販売機会の損失を最小化。サプライチェーンの柔軟さが、投資家心理を支えるんだ。
■第3段階:1週間で「信頼」を勝ち取れるか
攻撃から1週間が経てば、投資家は「回復力」を見極める。「原因の特定」「再発防止の投資」「通期業績」への影響見積り。この3点を明確にできれば、信頼コストはなんとか回収できる可能性が高い。トヨタは2022年、サプライヤーの攻撃で全工場を一時停止したが、翌日に稼働再開。もともと「どこかが止まっても全体は止まらない」仕組みを持っていたんだ。説明と再発防止策を短期間で示した結果、株価はすぐに安定した。被害よりも「再稼働までの速度」こそが企業価値を守る。
■サイバー攻撃は「経営手腕」が試される機会でもある
単なるITトラブルのように見えて、実は経営レベルが露呈してしまうんだ。人材、情報、責任の流れがどれだけ整理されているか。攻撃は避けられなくても、「止まらない経営」は作れる。
英語圏に比べて日本は防御が弱いと言われるが、逆に言えば伸び代がある。誠実さ(24時間)・仕組み(72時間)・信頼(1週間)。この3段階を意識して観察すれば、どんなニュースにも慌てなくなる。本当に難しいけどね。
■投資家へのメモ
・アスクル:被害公表は早く、次は72時間で工程表を出せるか。
・良品計画:未感染を即発表、委託分散の方針が出れば再評価へ。
・アサヒ:物流再開と流出評価の精度が鍵。業績影響を見極めたい。
巳之助は「恐れる」より「見極める」ことが重要かと。危機はいつも突然だが、信頼の積み上げはゆっくり効いてくる。相場も経営も、試されるのはまず「非常時の3日間」なんだ。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。