9月は休日数の減少分を差し引いても既存店は93%程度にとどまった。要因ははっきりしている。「暑秋」企画の精度不足、春夏の不振で在庫が積み残り、秋商品の立ち上がりを塞いだ。会社自身も在庫滞留とシーズン切り替えの遅れを認めている。販促効果も薄く、ECも含めて現場の苦戦が続く。
この構造はアパレル業界の典型的リスクだ。途中から修正が効きにくく、企画段階の精度で勝負が決まってしまう。ワールドの「暑秋」失敗は、「ユニクロ(UNIQLO)」など他社が定番商品で季節変動を平準化する中で、後れを取っている可能性があると巳之助は指摘したい。
・最高益と現場の乖離
今回の上方修正は、ナルミヤを完全子会社化したことで親会社に利益がすべて帰属するようになったこと、さらに法人税負担が軽減したことが大きい。帳簿上の利益は立派だが、現場では在庫と売上の重荷が続く。
もっとも、全体を見れば明るい材料もある。プラットフォーム事業は売上収益が前年同期比82.1%増の643億7000万円、セグメント利益は185.7%増の23億5000万円と急拡大。ユニフォーム事業を手掛けるエムシーファッションの連結効果が寄与し、非アパレル領域の収益力が高まっている。ワールドの「第二の柱」は着実に育ちつつある。
・ナルミヤは両刃の剣だ
ナルミヤは定番ブランド「プティマイン(petit main)」の台湾出店やキャラクターコラボでメディア露出が多く、話題性は十分だ。しかし実態は厳しい。2026年2月期中間決算では売上高191億円に対し、営業利益はわずか3億円(▲57%)、純利益は1億円弱(▲77%)にとどまった。華やかさとは裏腹に、利益は細っている。
IPコラボや海外展開は注目を集めるが、収益に結び付くまでに時間がかかるリスクをはらむ。投資家は、話題性と収益性のギャップを冷静に見極めたいところだ。
一方で、キッズ領域は安定した需要があり、「プティマイン」のような定番ブランドは長期的に顧客基盤を育てやすい強みもある。海外展開やIP戦略が利益化すれば、中期的な成長ドライバーに化ける可能性はもちろんあるよ。
・投資判断は?
短期的には配当109円という株主還元が投資家を支える。しかし、現場の在庫処理とナルミヤの利益改善が進まなければ、来期以降は失速する危険があるぞ。
注目すべきポイントは3点。
①10〜11月に既存店が95%台に戻せるか。
②ECの販売効率が前年同月比100%を上回れるか。
③ナルミヤの粗利率・販管費率が改善に転じるか。
この3点が揃えば、最高益は会計上のマジックではなく実力の裏付けとなる。買いレンジ目安は、現在の2,900円前後からの押し目を狙うなら2,600〜2,800円。できれば2,500円台が理想だな。巳之助は「配当増額の安心」と「アパレル現場の不安」で少し迷うけど。
巳之助メーター 2ニョロ 監視だ
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
買う時のポイント=10月〜11月に既存店95%回復とナルミヤの利益反転が確認できる局面。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。